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2017 年度 実施状況報告書

不均一系触媒を用いた酸素酸化反応による環境調和型分子変換法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K15430
研究機関徳島文理大学

研究代表者

松本 健司  徳島文理大学, 薬学部, 講師 (20531817)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード不均一系触媒 / 酸素酸化反応 / 環境調和 / アシロキシ化反応
研究実績の概要

2-アセトアミドアントラセンをトリフルオロ酢酸中で不均一系ロジウム触媒に作用させると、アントラセン9位炭素上でトリフルオロアセトキシ化反応が選択的に進行することを見出した。本反応の最適条件を決定すべく、様々な不均一系触媒を検討した。その結果、不均一系ロジウム触媒以外に、銅、ルテニウム、パラジウム、白金などの不均一系触媒存在下で本反応は進行することが分かった。その中でも白金触媒は高活性を示したが、アントラセンの過剰酸化によりアントラキノンが生成し、目的物は低収率に留まった。検討の結果、不均一系Rh/C触媒を用いると最も良好な結果が得られることを明らかにした。最適条件を明らかにしたので、次に基質一般性について検討した。アミド誘導体として、2-ピバルアミドアントラセンを最適条件下で反応に付したところ、円滑にトリフルオロアセトキシ化反応は進行し、目的の生成物を収率86%で得た。ベンズアミド体にも適応可能であり、2-メトキシベンズアミド、2,4-、2,5-、3,4-ジメトキシベンズアミド体を用いた場合に目的のトリフルオロアセトキシ化体を高収率で得ることに成功した。さらに、2-ピリジル体や2-フリル体を用いても所望の生成物を与えた。アントラセン以外にピレンを用いてもトリフルオロアセトキシ化が進行することも分かり、本反応の汎用性が高いことを明らかにした。次に、触媒の回収・再利用について検討した。最も良好な結果を与えた基質と不均一系Rh/C触媒を反応に付した後、反応溶液の遠心分離処理を行い、Rh/C触媒を沈殿させた。上澄みから目的加賀応物を定量的に得ると同時にRh/C触媒を回収した。回収したRh/C触媒を用い反応に付したところ、初回と同様に高収率で付加体を得ることに成功した。以下同様に際利用実験を繰り返した結果、8回の再利用が可能であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アントラセンの酸化では、9,10-アントラキノンまで容易に変換されるため、直接的な酸素官能基化反応は容易ではない。今回新たに見出した方法は、重金属酸化剤を用いる必要なく、空気中室温という温和な条件下で触媒的に進行する点で特徴的な反応である。アントラセン以外にピレンやペリレンなどの多環縮合芳香環にも適応できること、不均一系触媒の再利用が可能であること等を明らかにした。さらに、ジクロロ酢酸中で反応に付すと、ジクロロアセトキシ化反応が高収率かつ選択的に進行することを明らかにした。以上より、本研究の進捗状況は順調であると考えている

今後の研究の推進方策

今後の予定としては、上記反応の分子内アシロキシ化反応への展開を計画している。これまでの研究で見出した最適条件にて反応に付したところ、期待した反応が進行する知見をすでに得ている。しかし反応が遅く収率が中程度に留まるなど、改善の余地が残されている。従って、次年度は引き続き条件検討を試み、基質一般性を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

研究室既存の試薬や器具等を使用したため、若干の未使用額が生じた。次年度は、分子内アシロキシ化反応の条件最適化に加え、基質一般性に関する検討を予定しており、試薬を中心に多数の物品購入が見込まれる。繰り越した研究費と併せてこれらの物品購入に研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Aerobic C-H oxidation of arenes using a recyclable, heterogeneous rhodium catalyst2017

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, K.; Tachikawa, S.; Hashimoto, N.; Nakano, R.; Yoshida, M.; Shindo, M.
    • 雑誌名

      The Journal of Organic Chemistry

      巻: 82 ページ: 4305-4316

    • DOI

      10.1021/acs.joc.7b00300

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aerobic Oxidative Homocoupling Reaction of Anilides Using Heterogeneous Metal Catalysts2017

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto, S.; Matsumoto, K.; Iwata, T.; Shindo, M.
    • 雑誌名

      Tetrahedron Letters

      巻: 58 ページ: 973-976

    • DOI

      10.1016/j.tetlet.2017.01.075

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stereocontrolled Synthesis of Multisubstituted 1,3-dienes via an Allene-Claisen Rearrangement2017

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, K.; Mizushina, N.; Yoshida, M.; Shindo, M.
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 28 ページ: 2340-2344

    • DOI

      10.1055/s-0036-1590970

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regioselective One-pot Synthesis of Triptycenes via Triple-Cycloadditions of Arynes to Ynolates2017

    • 著者名/発表者名
      Umezu, S.; Dos Passos Gomes, G.; Yoshinaga, T.; Sakae, M.; Matsumoto, K.; Iwata, T.; Alabugin, I.; Shindo, M.
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie, International Edition

      巻: 56 ページ: 1298-1302

    • DOI

      10.1002/anie.201609111

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Anti-Tumor Activity and Immunotherapeutic Potential of a Bisphosphonate Prodrug2017

    • 著者名/発表者名
      Tanaka, Y.; Iwasaki, M.; Murata-Hirai, K.; Matsumoto, K.; Hayashi, K.; Okamura, H.; Sugie, T.; Minato, N.; Morita, C. T.; Toi, M.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: 5987

    • DOI

      10.1038/s41598-017-05553-0

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 不均一系触媒を用いた酸化的分子変換法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司
    • 学会等名
      第56回日本薬学会中国四国支部学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 不均一系触媒を利用した酸化的分子変換法の開発と応用2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司
    • 学会等名
      第8回徳島文理大学薬学部 学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 酸素酸化反応による触媒的ビアリールホモカップリング反応の開発2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司、興梠彰太、藤本茂伸、新藤充、吉田昌裕
    • 学会等名
      第43回反応と合成の進歩シンポジウム
  • [学会発表] 酸素を共酸化剤として用いる触媒的芳香環酸素官能基化反応の開発2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司、橋本紀子、飯山晃生、廣兼司、吉田昌裕
    • 学会等名
      第56回日本薬学会中四国支部学術大会
  • [学会発表] 不均一系触媒を用いる触媒的アニリン-アニリンクロスカップリング反応の開発2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司、武田哲、廣兼司、吉田昌裕
    • 学会等名
      第56回日本薬学会中四国支部学術大会、徳島大学
  • [学会発表] (-)-Stemonamineの全合成およびその光学的安定性2017

    • 著者名/発表者名
      藤田聡、富山泰至、岩田隆幸、松本健司、新藤充
    • 学会等名
      第59回天然物有機化合物討論会
  • [学会発表] 固定化金属触媒による酸素酸化反応の開発2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司、橋本紀子、中野李菜、太刀川祥平、新藤充、吉田昌裕
    • 学会等名
      日本プロセス化学会2017サマーシンポジウム
  • [学会発表] 不均一系ロジウム触媒を用いた酸化的ビアリールカップリング反応の開発2017

    • 著者名/発表者名
      松本健司、興梠彰太、酒井健太郎、新藤充、吉田昌裕
    • 学会等名
      第111会有機合成シンポジウム
  • [学会発表] イノラート・アライン3連続環化付加反応によるトリプチセンのワンポット合成2017

    • 著者名/発表者名
      16.吉永達郎、梅津智、Gabriel dos Passos Gomes、榮心勁、松本健司、岩田隆幸、Igor Alabugin、新藤充
    • 学会等名
      第27回万有福岡シンポジウム
  • [図書] New Horizon of Process Chemistry by Scalable Reactions and Technologies2017

    • 著者名/発表者名
      Shindo, M., Matsumoto, K.
    • 総ページ数
      11-27
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-9811034206

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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