MCM (minichromosome maintenance)タンパク質は、六量体リングを形成してATPの加水分解エネルギーを用いて二本鎖DNAを一本鎖DNAに分離するヘリカーゼとして機能する。本研究は、高速AFMを用いてMCMタンパク質六量体リングの動きを観察し、動的過程を解明することを目指して開始した。 本研究の遂行過程で、ストレプトアビジンと同等のビオチン結合能を有するタマビジン2が、ポリエチレングリコールと高濃度のマグネシウムイオン存在下において、マイカ上に二次元結晶を形成することを昨年度までに発見した。これはビオチン化した生体分子の選択的な固定が可能な基板を短時間で作製する方法として有用である。 この二次元結晶を用いて、古細菌M. thermoautotrophicum由来MCMタンパク質を固定化し、高速AFMによる観察を行った。MCMタンパク質のC末端にはAvi-tagを導入し、ビオチンリガーゼによってAvi-tagのビオチン化を行った。観察の結果、横倒しの状態で固定された、非対称な高さプロファイルを持つ六量体リング及び対称的な高さプロファイルを持つ十二量体と思しき構造の2種類の構造体が主に見られた。さらに六量体リング構造を詳細に観察したところ、N末側のリング中央部が時折突出する様子が捉えられた。 一方、タマビジン2二次元結晶の応用研究も行った。ビオチン化したシャペロニンGroELの14量体ダブルリング構造を横倒しの状態で二次元結晶上に固定化し、コシャペロニンGroES 7量体との相互作用を、巻き戻し可能な変性基質タンパク質存在下及び基質タンパク質非存在下において高速AFMによって可視化した。この結果と既に報告された巻き戻し不可能な変性基質タンパク質存在下での結果を比較し、GroELとGroESの結合・解離の反応パターンと反応ステップの速度の相違等を明らかにした。
|