研究実績の概要 |
研究期間最終年度では,実施計画の当該年度の計画に従い,Smith-Lemli-Opitz症候群 (SLOS) モデルラットから得られた血清に対して,前年度までに得られた4種のモノヒドロキシ-7-デヒドロコレステロール (4α-, 4β-, 24S-及び25-ヒドロキシ-7-デヒドロコレステロール) 標品と照らし合わせることで,生体試料中の存否の確認を行った.すなわちSLOSの新規診断マーカーとしてのモノヒドロキシ-7-デヒドロコレステロールの妥当性を評価した.SLOSモデルラットは7-デヒドロコレステロールレダクターゼ阻害剤であるAY9944を妊娠ラットに投与後,産まれた仔ラットに経時的に摂取させて調製した.分析の方法論にはLC/ESI-MS/MS (Waters社の質量分析計 Premier XEにLC-2695eクロマトグラフを接続した装置を使用)を用いた.7-デヒドロコレステロール骨格の共役ジエンに選択的に反応する,我々の開発したDAPTADを誘導体化試薬に用いた.なお,DAPTADにより誘導体化前と比較し,300倍の感度向上が達成された.SLOSモデルラット及びコントロールラットの血清それぞれ5 μLをアセトニトル50 μLで除タンパクのみの簡単な前処理の後,DAPTAD誘導体化し,血清1 μL相当分を装置に付した.SLOSモデルラットの血清中から, 4α-及び4β-ヒドロキシ体が明瞭に検出された.一方,24S-及び25-OH体はSLOSモデルラット及びコントロールラットの血清中からは検出されなかった.以上の結果から,7-デヒドロコレステロールの側鎖のヒドロキシ体よりも,ステロイドA環4位のヒドロキシ体がSLOSの診断マーカーとして期待されるという結果を得た.
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