研究課題/領域番号 |
17K15437
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
草森 浩輔 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (90707407)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞治療 / 細胞増殖制御 / 自殺遺伝子 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞へのinducible caspase-9(iC9)遺伝子の導入とiC9特異的アポトーシス誘導剤の濃度制御による細胞増殖制御法の開発を目的として、移植細胞の増殖を薬物によって制御可能な安全かつ有効性の高い細胞移植治療法の確立を試みるものである。2018年度は、2017年度の研究内容に引き続き、マウスインスリノーマ株MIN6細胞およびマウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞への単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の導入とそのアポトーシス誘導剤であるガンシクロビルを用いることで、各細胞の増殖制御に成功した。また、C3H10T1/2細胞にHSVtk遺伝子と抗腫瘍サイトカインinterferon gamma遺伝子を導入し、担癌マウスに移植することで優れたがん抑制効果を実証するとともに、ガンシクロビル投与によって移植した細胞を除去可能であることも示した。さらに、iC9遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞株UE7T-13/iC9細胞の樹立に成功し、iC9特異的アポトーシス誘導剤AP20187の添加濃度を調節することでUE7T-13/iC9細胞の増殖制御にも成功した。本成果は、TERMIS World Congress 2018や日本薬学会第139年会などの複数の学会において発表し、HSVtk遺伝子とガンシクロビルを利用したMIN6細胞の増殖制御に関する内容はJournal of Controlled Release誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、細胞への単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子の導入とそのアポトーシス誘導剤であるガンシクロビルを用いることで、細胞の増殖制御法の開発に成功した。また、抗腫瘍サイトカインinterferon gammaとHSVtk遺伝子を発現する細胞の移植により、担癌モデルマウスにおけるがん増殖の抑制に成功するとともに、ガンシクロビル投与によって移植した細胞の増殖制御にも成功した。2018年度は、レンチウイルスを利用することでinducible caspase-9(iC9)遺伝子発現ヒト間葉系幹細胞株(UE7T-13/iC9細胞)の樹立に成功し、AP20187によるUE7T-13/iC9細胞のin vitroにおける増殖制御にも成功していることから、進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子およびinducible caspase-9(iC9)遺伝子を用いた細胞増殖制御法の開発に成功した。そこで最終年度は、マウスに移植したiC9遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞株UE7T-13/iC9細胞の増殖制御を試みるとともに、iC9による細胞増殖制御システムを搭載した生理活性物質産生細胞を樹立することで、細胞移植による安全な疾患治療を実証する。具体的には以下の通り。 ・UE7T-13/iC9細胞を移植したマウスにiC9特異的アポトーシス誘導剤AP20187を投与することにより、移植した細胞の数を調節する、または細胞を完全に除去する。 ・UE7T-13/iC9細胞にinterferon gammaなどの抗腫瘍分子を遺伝子導入し、がん細胞の増殖抑制効果を評価する。 ・抗腫瘍分子を発現するUE7T-13/iC9細胞を担癌マウスに移植し、抗腫瘍効果を評価する。また、経時的に血中の抗腫瘍分子濃度を測定し、AP20187投与による抗腫瘍分子の制御および除去を試みる。 ・AP20187を移植細胞へ効率的に送達可能なドラッグデリバリーシステムを開発する。
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