本研究は、細胞へのinducible caspase-9(iC9)遺伝子の導入とiC9特異的アポトーシス誘導剤による細胞増殖制御法を開発することで、移植細胞の増殖を薬物投与により制御可能な安全かつ有効性の高い細胞移植治療法の確立を試みるものである。 最終年度である2019年度は、これまでの研究内容を継続し、単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子と抗腫瘍サイトカインinterferon gamma遺伝子を導入したマウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞移植によるがん増殖の抑制に成功した。C3H10T1/2/HSVtk/interferon gamma細胞が放出するinterferon gammaはマウスに移植後もガンシクロビル投与によって制御されたことから、安全性の高い細胞移植治療法の開発に成功した。本成果をもとに、iC9遺伝子を安定発現するヒト間葉系幹細胞株UE7T-13細胞の樹立にも成功し、iC9特異的アポトーシス誘導剤AP20187を投与することでマウスに移植したUE7T-13/iC9細胞の増殖制御に成功した。現在は、UE7T-13/iC9細胞に治療用タンパク質であるエリスロポエチンを導入し、細胞遺伝子治療法への応用を試みている。さらに、細胞遺伝子治療法の治療効果を増大するために細胞のカプセル化についても着手している。今後は、AP20187を移植細胞へ効率的に送達可能なドラッグデリバリーシステムを開発する予定である。 本研究成果は、日本薬剤学会第34年会や日本薬学会第140年会などの複数の学会において発表し、International Journal of Molecular Sciences誌やScientific Reports誌に掲載された。
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