研究課題/領域番号 |
17K15439
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山本 佐知雄 近畿大学, 薬学部, 講師 (10707954)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オンチップ法 / オンライン濃縮 / 酵素消化 / 糖タンパク質糖鎖 |
研究実績の概要 |
高機能化マイクロチップを用いるバイオ医薬品の超高速分析システムの開発ではバイオ医薬品の研究や品質管理に使用するため濃縮、特異的抽出および粗分画、蛍光検出などの一連の過程をチップ上で30分以内に完了することが可能な高速分析法の開発を目指している。 平成29年度は短時間酵素消化法のオンラインマイクロチップ酵素消化法の開発とオンライン試料濃縮・標識マイクロチップ電気泳動法の開発に関する研究を遂行した。短時間酵素消化法のオンラインマイクロチップ酵素消化法ではマイクロチップの流路に酵素を含有したアクリルアミド系ポリマーをピンポイントで作製し、バイオ医薬品の品質管理において重要な糖鎖の解析に応用した。糖タンパク質から糖鎖を切断するPNGase Fを封入したゲルを用いたところ酵素量を1/40にしても従来法で少なくとも1日必要であった工程を電圧の切り替えのみで10分以内に短縮出来る可能性が示唆された。現在酵素消化の最適化条件について検討を行っている。 オンライン試料濃縮・標識マイクロチップ電気泳動法の開発では弱イオン性の光重合アクリルアミドゲルをマイクロチップ流路交差部にピンポイントで作製し,このゲル近傍で,試料の濃縮と蛍光標識化を同時に行うことが可能な分析法の開発を行った。まず、本法における蛍光試薬の検討を行った。試料にアミノ酸を用いfluorescein isothiocyanate,5-(4,6-dichlorotriazinyl) aminofluoresceinなどのアミノ基の標識試薬を用い反応時間に関する検討を行ったところ5-(4,6-dichlorotriazinyl) aminofluoresceinを用いることでアミノ酸を5分以内に標識できることが分かった。また、この時、マイナスに電荷を帯びているアミノ酸ではオンライン濃縮が起こり感度が向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は短時間酵素消化法のオンラインマイクロチップ酵素消化法の開発とオンライン試料濃縮・標識マイクロチップ電気泳動法の開発に関する研究を遂行した。短時間酵素消化法のオンラインマイクロチップ酵素消化法ではマイクロチップの流路に酵素を含有したアクリルアミド系ポリマーをピンポイントで作製し、バイオ医薬品の品質管理において重要な糖鎖の解析に応用した。糖タンパク質から糖鎖を切断するPNGase Fを封入したゲルを用いたところ酵素量を1/40にしても従来法で少なくとも1日必要であった工程を電圧の切り替えのみで10分以内に短縮出来る可能性が示唆された。この方法では糖タンパク質のままの状態では反応効率が落ちる結果が示されており、タンパク質を変性させるか、ペプチドにまで切断する必要がありこの前処理もチップ上で行うために多分岐流路で実験を行っている。 オンライン試料濃縮・標識マイクロチップ電気泳動法の開発では弱イオン性の光重合アクリルアミドゲルをマイクロチップ流路交差部にピンポイントで作製し,このゲル近傍で,試料の濃縮と蛍光標識化を同時に行うことが可能な分析法の開発を行った。まず、本法における蛍光試薬の検討を行った。試料にアミノ酸を用いfluorescein isothiocyanate,5-(4,6-dichlorotriazinyl) aminofluoresceinなどのアミノ基の標識試薬を用い反応時間に関する検討を行ったところ5-(4,6-dichlorotriazinyl) aminofluoresceinを用いることでアミノ酸を5分以内に標識できることが分かった。また、この時、マイナスに電荷を帯びているアミノ酸ではオンライン濃縮が起こった。この方法の汎用性を高めるため、試料の電荷に関わらず一定のオンライン濃縮を実現できる条件に付いて検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は昨年度の研究結果をまとめつつ以下に示す実験を行う予定である。 細胞培養や輸送に適したフォトリソグラフィーフリー多分岐流路を有するマイクロチップの作製;市販のマイクロチップは1枚あたり数千円から数万円と高価であり、流路の分岐鎖も不足しているため,新たなマイクロチップの作製が必要と考えられる。通常のマイクロチップの作製はフォトリソグラフィーが用いられるが,これには工学系の知識や専用の装置が必要となってしまう。そこでアガロースとポリアクリルアミドを用いたフォトリソグラフィーフリーのマイクロチップの作製を行う。本研究で作製する予定のマイクロチップの素材にはポリジメチルシロキサン(PDMS)の土台に対しアガロース,アクリルアミドで作製した構造物に対して貼り合わせを行う。貼り合わせは低温から徐々に高温に上げる。アガロース系ならば80°C、アクリルアミド系ならば35°Cで溶液に変化するため細胞培養の度合いを観察しながら最適化を行う.また、アガロースとポリアクリルアミドの構造物は自由に配置することが可能であるため多分岐流路の作製にも大いに役立つと考えられる。作製したアガロース・アクリルアミド型マイクロチップの機能評価には、試料に蛍光試薬や糖タンパク質由来糖鎖などを用い、作製したアガロース・アクリルアミド型マイクロチップの分離特性などを評価する。また、機能性の評価と分離分析の応用を行う一方で細胞の培養条件の検討を行い、細胞の総タンパク質の回収や前年度に開発する予定のオンライン酵素消化などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
卓上真空プラズマ装置の購入を計画していたが、本研究計画前に早急に装置が必要になったため資金が余ってしまった。次年度はこのプラズマ装置を高度に管理するための機械を購入する予定である。
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