研究課題/領域番号 |
17K15440
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
亀井 敬泰 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (40637451)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Nose-to-Brain送達法 / GLP-1受容体作動薬 / アルツハイマー型認知症 / 細胞膜透過ペプチド / インスリン |
研究実績の概要 |
本研究では、重度に進行した記憶障害を元の状態に治癒する新たな治療法を確立するため、細胞膜透過ペプチド (CPPs) 経鼻併用投与法を介してGLP-1受容体作動薬 (Exendin-4) を脳に送達することを目的とした。 まず、ddYマウスを用いて経鼻投与後のExendin-4の脳内移行性を評価した結果、CPPsの一種であるL-penetratin併用により、嗅球、視床下部、海馬、大脳皮質、小脳および脳幹のすべての部位においてExendin-4濃度が顕著に増大することが明らかになった。次に、認知機能障害の進行した老化促進マウス(SAMP8マウス)にExendin-4、L-penetratinおよびインスリンの3種を同時併用し経鼻投与を5週間続けた結果、認知機能低下が回復することが明らかになった。これらの結果より、細胞膜透過ペプチド併用経鼻投与法が、Exendin-4脳送達効率の向上および重度の認知機能障害を治癒する有効な戦略となりうることが示唆された。 さらに、Exendin-4、L-penetratinおよびインスリンを同時に経鼻投与したddYマウスの脳ホモジネートサンプルをウェスタンブロット法により解析した結果、脳内インスリンシグナル伝達経路の活性化作用が認められた。すなわち、CPPs併用経鼻投与法を介して脳に効率的に移行したExendin-4が、インスリン刺激によって開始された記憶形成シグナル伝達を活性化することにより、SAMP8マウスの重度記憶障害を回復させることが示唆された。本研究の結果より、経鼻投与を基盤としたGLP-1作動薬の効率的な脳送達法が、軽度のみならず重度の認知機能障害の治療にも有効となる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って順調に進展しており、研究成果を随時発表している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、Exendin-4脳送達後のインスリンシグナル伝達効率の変動をさらに検証するとともに、記憶改善効果と脳内アミロイドβ濃度変化との関連性についても明らかにする。また、老化促進マウスよりもアルツハイマー病患者の病態を適切に再現した疾患マウスを用いて、CPPs併用経鼻投与を介したアルツハイマー病治療効果を検証する。加えて、CPPs併用法を介した鼻腔から脳へのExendin-4送達メカニズムについても詳細に検討する予定である。
|