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2017 年度 実施状況報告書

ジアシルグリセロールキナーゼαが癌細胞増殖を促す一方でT細胞を不活化する分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 17K15444
研究機関千葉大学

研究代表者

高橋 大輔  千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (70791523)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードジアシルグリセロールキナーゼ / 脂質代謝酵素 / シグナル伝達 / がん免疫 / 構造解析 / EFハンドモチーフ / 昆虫細胞・バキュロウイルス
研究実績の概要

ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は,二次メッセンジャーとしてはたらくジアシルグリセロールとホスファチジン酸の細胞内濃度を調節するシグナル伝達系の制御因子である.なかでも,そのαアイソザイム(DGKα)は,「がん細胞を増殖させ,逆にT細胞を不活化する」という,申請者の知る限り他に例をみない機能をもち,がん免疫治療の標的の一つとして考えられている.本研究では,未決定・未探索のDGKαの立体構造解析と相互作用ネットワーク解析を行い,細胞内シグナリングの分岐器としてはたらくDGKαの分子機構を解明することを目的としている.本年度は,当初の予定通りDGKα構造解析・相互作用ネットワーク解析のための蛋白質試料の発現・精製系の確立に加え,DGKαの活性をカルシウム依存的に制御するN末端EF-hand motif(DGKα-EF)の構造解析を行った.

全長DGKα試料の調製: 数種の可溶性タグを融合したDGKα触媒ドメイン(DGKα-CD)の大腸菌での発現,或いは昆虫細胞-バキュロウイルス発現系による発現・精製を試みたが,いずれの系においてもDGKα-CDは,不溶性或いは可溶性の凝集体を形成した.しかしながら,これまで豚の胸腺から精製の報告がある全長DGKαを,昆虫細胞発現系を用いて,活性を保持した単量体として収率良く精製することができた(論文投稿済み).

DGKα-EFの構造解析: DGKα-EFへのカルシウムの結合と,結合による構造変化を等温滴定型カロリメトリー,ゲル濾過クロマトグラフィー,質量分析を組み合わせて解析した.さらに,カルシウム結合型DGKα-EFの結晶化に成功し,結晶構造を単波長異常散乱法(S-SAD法)により解析した.現在,構造の精密化を進めている(論文投稿準備中).

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで可溶性画分への発現と精製が非常に困難であったDGKαを,DGキナーゼ活性を持つ単量体として精製した.さらに濃縮による蛋白質試料の凝集がないことを確認し,結晶化のスクリーニングを開始することができた.このDGKα試料は,プルダウンアッセイによるがん細胞とT細胞における相互作用蛋白質の探索にも利用することができる.今後,DGKαの大量発現と精製を行い,結晶化のスクリーニングを進めれば,X線回折実験のための結晶を得る可能性は高いと考える.また,DGKαの活性制御に関与するN末端EFハンドモチーフ(DGKα-EF)の立体構造を初めて決定し,生物物理学的手法によりカルシウム結合による構造変化も特徴づけることができた.これらの結果は,DGKαの分子内相互作用による活性制御の分子基盤を理解するための新たな知見である.

今後の研究の推進方策

概ね順調に進行しており,当初の計画に沿って研究を進めていく.DGKαの大量発現と精製を行い,次年度内の結晶化と構造解析を目指す.またリガンド(AMP-PNP或いは阻害剤)との複合体など,結晶化に適した試料の最適化も同時に進め,結晶化成功の確率を上げていく.また得られたDGKα試料を用いてプルダウンアッセイによるがん細胞とT細胞における相互作用蛋白質の探索,或いは共免疫沈降法によるがん細胞,T細胞における相互作用蛋白質の探索も進めていく.

次年度使用額が生じた理由

国内学会への旅費が抑えられたため.

2018年度も引き続きジアシルグリセロールキナーゼの構造・相互作用解析のために必要な分子生物学・生化学試薬類の購入を予定している.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Abnormalities of the serotonergic system in diacylglycerol kinase δ-deficient mouse brain.2018

    • 著者名/発表者名
      Lu, Q., Komenoi, S., Usuki, T., Takahashi, D., and Sakane, F.
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 497 ページ: 1031-1037

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.02.165

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Where do substrates of diacylglycerol kinases come from?: Diacylglycerol kinases utilize diacylglycerol species supplied from phosphatidylinositol turnover-independent pathways.2018

    • 著者名/発表者名
      Sakane, F., Mizuno, S., Takahashi, D. and Sakai, H.
    • 雑誌名

      Advances in Biological Regulation

      巻: 67 ページ: 101-108

    • DOI

      10.1016/j.jbior.2017.09.003

    • 査読あり
  • [学会発表] Molecular basis for the intramolecular regulation of DGKα: analysis of Ca2+ induced conformational changes in N-terminal EF-hand motifs2018

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Takahashi, Kano Suzuki, Taiichi Sakamoto, Takeo Iwamoto, Takeshi Murata, and Fumio Sakane
    • 学会等名
      第18回 日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] 新規リン脂質プローブの開発を目指したジアシルグリセロールキナーゼηプレクストリン相同ドメインの脂質結合解析2017

    • 著者名/発表者名
      川瀬功暉,高橋大輔,坂本泰一,坂根郁夫
    • 学会等名
      日本分子生物学会/日本生化学会 2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [備考] 千葉大学大学院 理学研究院 化学研究部門 生体機能化学研究室ホームページ

    • URL

      http://sakane32.wixsite.com/biofunctionchemistry

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公開日: 2018-12-17  

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