研究課題
細胞内シグナリングの分岐器として機能する脂質キナーゼDGKαの分子基盤を解明することを目的として研究を行った.触媒ドメインの構造解析:前年度にDGKα全長の試料の発現系を昆虫細胞を用いて確立した.本年度はDGKα全長の試料の大量発現と精製を進めた.精製試料の活性の確認,二次構造解析を行った後(Takahashi et al., Peer J, 2018),結晶化スクリニーングを進めたが,蛋白質結晶は得られなかった.さらに今後の結晶化のための試料調製の効率を上げるため,新規のコンストラクトを作成した.EF-handドメインの構造解析: 前年度に着手したEF-handの結晶構造解析とCa2+結合による構造変化の解析を継続し,Ca2+結合型のDGKα EFの結晶構造を2.1Aの分解能で決定した.DGKα EFは,EF-handのリガンド様ヘリックス(LM helix)をもち,LM helixが疎水的相互作用を介してDGKα EFにパッキングされていることが明らかになり,Ca2+を介したDGKαの分子内活性制御に関与している可能性が示唆された(Takahashi et al., Protein Sci, 2019).2年間の研究を通して,これまで理解が乏しかったDGKの構造生物学的研究を進めた.昆虫細胞を用いて活性を保持したDGKα全長の試料を初めて大量発現させ,結晶化のための高純度に精製した試料を得た.さらにN末端の活性制御領域であるDGKα EFのCa2+結合型の結晶構造を決定するとともに,Ca2+が結合するとDGKα EFがプロテアーゼ耐性のあるリジッドな構造へと変化することを生化学・物理化学的手法により明らかにした.本研究によるDGKα試料調製法の確立と,N末端領域に関する構造生物学的理解は,がん免疫治療の標的の一つとして注視されているDGKαの阻害剤開発へ貢献し得る.
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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