研究課題/領域番号 |
17K15447
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松島 隆英 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (40636560)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炎症 / DAMPs / 細胞死 |
研究実績の概要 |
生体は始終生体内外からの侵襲に曝されているが, それらを巧みに処理・対応することで生体の恒常性を維持している。このうち生体外からの侵襲は微生物由来の分子群であるPathogen Associated Molecular Patterns(PAMPs), 生体内からは内部で生じた壊死細胞由来, あるいは障害を受けた組織由来の分子群であるDamage Associated Molecular Patterns(DAMPs)と呼ばれる。特にDAMPsは細胞がネクローシスした時だけでなくアポトーシス、ネクロプトーシス、パイロプトーシスと言った多様な細胞死のシグナルを受けて受動的あるいは能動的に分泌する細胞の『ダイイング・メッセージ』とも呼ばれ、主に炎症性の細胞応答を誘導することが明らかとなっている。本研究では新規のDAMPsタンパク質の同定およびその分泌経路と機能解析を行うことで、細胞死シグナルにおける各種DAMPs因子の『ダイイング・メッセージ』としての生理的意義を明らかにするべく研究を進める。この目的のために本研究では1)新規DAMPsタンパク質の同定、2)候補因子の分泌と細胞死シグナルと関係性に関する解析、3)候補因子の分泌後の生理的機能解析、4)創薬ターゲットとしての候補因子の評価の4つのステップについて段階的に研究を進めていく。 平成29年度では本研究に先立ち実施したクリーニングにより同定した新規DAMPsタンパク質候補の13因子について内在性タンパク質の分泌解析を行った。またルシフェラーゼ解析を応用したsELISA法に代わる新たな内在性タンパク質の分泌解析手法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に先立ち実施したクリーニングにより同定した新規DAMPsタンパク質候補の13因子について内在性タンパク質の分泌解析を行い、現在のところ2因子について内在性タンパク質の非アポトーシス的刺激下における細胞外の分泌を確認することができた。またこれらタンパク質がサイトカインの誘導するといった炎症反応を惹起することも精製タンパク質を用いた解析から明らかにすることができた。さらに特異的な抗体が必要となるsELISA法に代わる手法としてルシフェラーゼ解析を応用し、内在性タンパク質の分泌解析法も開発することができた。この手法も用いて、平成30年度では新規DAMPsタンパク質の分泌機構と生体内での生理機能を明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では引き続き、新規DAMPsタンパク質の精製タンパク質を用いて細胞に対する機能を解析していく。また平成29年度ではCRISPR/Cas9システムを用いて細胞・マウスに対してルシフェラーゼタンパク質タグをノックインすることで内在性タンパク質の分泌解析行うシステムを開発したことを応用し、各新規DAMPsタンパク質に対してルシフェラーゼタンパク質タグのノックインをシステマティックに実施する。また生体内での創薬ターゲットとしての新規DAMPsタンパク質の有用性を評価できるように、このルシフェラーゼタンパク質タグに対する中和抗体も作製していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) sELISA法に代わる手法としてルシフェラーゼタンパク質タグが有用であることが平成29年度の解析から明らかとなったので、このタグに対する抗体作製に取り掛かることになった。実際にはこの抗体を作製の際に哺乳動物細胞を用いた作製方法を検討することになったが、抗体産生細胞の作製が難航してしまったため、その作製費用の一部を次年度に繰り越すことになった。 (使用計画) 抗体作製用の細胞購入と細胞培養用の消耗品購入に使用する予定である。
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