近年、がんや神経変性疾患など様々な疾患において細胞が分泌するナノサイズの小胞エクソソームの役割りが明らかとなりつつある。本研究では、細菌感染におけるエクソソームの機能解明を目的に研究を行った。まず、細菌感染による急性炎症モデルでエクソソーム分泌細胞、受取り細胞、エクソソームの効果、エクソソーム中の機能分子の解析をおこなった。その結果、炎症初期では好中球が大量のエクソソームを分泌し、多くはマクロファージに取込まれ、組織傷害を緩和することを明らかにした。好中球由来エクソソームがマクロファージにどのような作用を及ぼしているのかを明らかにするために、トランスクリプトーム解析を行い、好中球エクソソームがマクロファージでNF-κB経路を活性化することを明らかにした。好中球由来エクソソームで活性化したマクロファージの細菌貪食能、炎症性サイトカイン産生能をin vitroで評価した。その結果、エクソソームが容量依存的にこれらの機能を亢進させることを明らかにした。エクソソーム内包タンパク質の質量分析法による網羅的解析とその機能評価から、エクソソーム中の熱ショックタンパク質の一部にマクロファージを活性化させる効果が認められた。最後に、がんにおける好中球エクソソームの有効性を検証したところ、エクソソームがマクロファージのがん細胞貪食能を亢進し、in vivoでも抗腫瘍効果を示すことを確認した。本研究では、細菌感染により好中球が分泌するエクソソームが、強いマクロファージ活性化能をもつことを明らかにし、細菌感染や腫瘍に対して有効であることを明らかにした。
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