研究課題
内因性リガンドを介した慢性炎症は、メタボリックシンドロームの発症を決定づける強力な増悪因子である。自然免疫受容体TLR4に認識される内因性リガンドは多岐に及んでおり、近年でも発見が相次ぐなど、その炎症惹起メカニズムの全貌は解明されていない。申請者は新たに、肥満時に増加するスフィンゴ糖脂質:ガングリオシドGM3が、Toll-like receptor 4 (TLR4) の内因性リガンドとして慢性炎症を惹起すること、その生理活性がGM3のアシル鎖構造(鎖長や不飽和度)の違いによって制御されることを見出している。今年度は、これまでの結果をまとめ、論文の作成および投稿を行った。とくに、昨年度までに得られたGM3ガングリオシドのアシル鎖構造に応じたTLR4活性化の分子メカニズムについて、論文化を行っている。また、培養細胞や、野生型およびGM3合成酵素ノックアウトマウスに由来する脂肪組織を用いて、生体内や組織中におけるGM3ガングリオシドの生理機能解析や、異なるアシル鎖のGM3ガングリオシドが産生されるメカニズムの解析についても着手した。加えて、本課題を遂行する過程において、GM3ガングリオシド以外にも、メタボリックシンドロームに関連した慢性炎症(糖尿病性腎症)モデルに関与するグロボ系スフィンゴ糖脂質分子種を新たに見出し、これがTLR4を標的としていることを見出した。この内容についても、論文の作成、投稿、および発表を行った。さらに、これまでに本課題で得られた結果にもとづいて、国内外の学会で口頭・ポスター発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまでの結果をもとに論文作成を行い、投稿することができた。GM3産生メカニズム解析、生理機能解析に用いる実験系の構築も進展した。本課題を遂行する過程において、GM3ガングリオシド以外にも、メタボリックシンドロームに関連した慢性炎症に関与するグロボ系スフィンゴ糖脂質分子種を新たに見出した。これについて、論文作成、投稿、および論文発表を行うことができた。
今後は、投稿中の論文について必要とされる実験を行いつつ、GM3産生メカニズム解析、生理機能解析についても継続して実施する。
2018年度末の時点で本補助事業の成果をまとめた論文を投稿中であり、翌年度も査読結果に応じた追加実験を実施する必要が生じたため、補助期間の延長を行ったことによる。使用計画:本補助事業の成果を発信するための論文発表・学会発表、それに伴う追加実験などの実施に用いる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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