うつ様行動を懸垂尾試験および強制水泳試験を用い評価したところ、Cav3.1 欠損マウスではうつ様行動はみられなかった。一方、海馬歯状回の脆弱性と相関が見られる社会性行動が Cav3.1 欠損マウスでは低下していた。Cav3.1 欠損マウスと野生型マウスでは行動量に変化はみられなかった。 ストレスホルモンを投与したうつ様モデルマウスに対する ST101 および SAK3 の作用を検討したところ、改善効果はみられなかった。現在、例数の追加と再現性について検討している。また、ストレスホルモンを Cav3.1 欠損マウスに投与し、同様にうつ様行動について評価している。 野生型および Cav3.1 欠損マウスの海馬歯状回サンプルをマイクロアレイ解析にかけ、遺伝子変化について解析を行った。その結果、昨年度に報告した細胞内シグナル伝達の低下と相関し、BDNF 遺伝子発現が低下しているのがわかった。その他、興味深い遺伝子を数種見出すことが出来た。低下した遺伝子群において標的を絞り、標的分子の活性化または発現増強を薬理学および遺伝学的に行い、Cav3.1 欠損マウスにみられる神経新生低下が改善されるか検討する予定である。 さらに、新生細胞には主に Cav3.2-3.3 ではなく、主に Cav3.1 チャネルが発現していることがわかった。今後、Cav3.2-3.3 の未成熟細胞における発現について免疫染色法により確認する。 また、SAK3 投与により、グルタミン酸および GABA 遊離が促進されることを見出した。
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