研究課題/領域番号 |
17K15457
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長坂 明臣 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10723877)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロトン感知性受容体 / 癌 / 腫瘍関連マクロファージ |
研究実績の概要 |
固形癌では、癌細胞などから産生される乳酸や、癌組織に浸潤してくる免疫細胞によって起きる炎症により、癌組織ではpHが酸性に傾く(pHの低下)。これまで癌細胞自身におけるpH低下の生理的意義については研究が進められてきたが、癌細胞以外の周囲の正常細胞や癌組織に浸潤する免疫細胞におけるpH低下の生理的意義は、ほとんど解明されていない。そこで私達は、癌組織おいて、癌細胞の増殖や転移を手助けすると言われている腫瘍関連マクロファージ(Tumour-Associated Macrophages; TAM)におけるpH低下の生理的意義の解明を試みた。pH低下の生理的意義の解明にあたり、私達は、細胞外のpHの低下によって活性化される受容体、プロトン感知性受容体に着目すれば、その生理的意義の一端を解明できると考えた。 初年度は、主に下記3つの項目を実施した。 1.腫瘍細胞株をマウスの皮下に投与し、腫瘍モデルマウスを作製した。その後、腫瘍からTAMを単離し、TAMにおけるプロトン感知性受容体のmRNAの発現量をリアルタイムPCRで確認した。その結果、これまで同定されたプロトン感知性受容体受容体の中で、着目すべきプロトン感知性受容体を絞りこむことができた。 2.移植に用いた腫瘍細胞株におけるプロトン感知性受容体の影響と、TAMにおけるプロトン感知性受容体の影響を明確に区別するため、ゲノム編集技術を用いて、移植に用いた腫瘍細胞株のプロトン感知性受容体欠損株を作製した。 3.TAMにおけるプロトン感知性受容体の役割を調べるため、TAM特異的なプロトン感知性受容体欠損マウスの作製している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にも記したように、TAM特異的なプロトン感知性受容体欠損マウスを作製している。TAM特異的なプロトン感知性受容体欠損マウスを作製するには、いくつかの交配のステップがあるが、各ステップにおいて交配がかかりにくく、また、目的マウスの誕生匹数が少なかったため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、以下の研究実施を計画する。 1.野生型マウスとTAM特異的なプロトン感知性受容体欠損マウスで、腫瘍形成における病態比較を詳細に行う。 2.野生型TAMとプロトン感知性受容体欠損TAMを単離し、DNAマイクロアレイ解析を行い、プロトン感知性受容体依存的に腫瘍形成に影響を与える分子を探索する。
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