研究実績の概要 |
平成30年度は、5/6腎臓摘出により作製した慢性腎臓病 (Chronic kidney disease: CKD) モデルマウスの不安様行動および社会性の低下に対する、Na+, K+-ATPase活性調節薬Rostafuroxinの効果について検討し、主に以下の成績を得た。 1. 高架式十字迷路試験において、Rostafuroxinを連日経口投与されたマウスでは、CKDモデルマウスに比べてOpen arm滞在時間が延長した。さらに明暗箱試験において、Rostafuroxinを連日経口投与されたマウスでは、CKDモデルマウスに比べて明箱滞在時間が延長したことから、Rostafuroxinが不安様症状を改善することが示唆された。 2. 社会性試験において、Rostafuroxinを連日経口投与されたマウスでは、CKDモデルマウスに比べて新規マウスへの接触時間が延長したことから、Rostafuroxinが社会性の低下を改善することが示唆された 3. CKDモデルマウスにおける脳内Na+, K+-ATPase活性低下に対して、Rostafuroxinを連日経口投与されたマウスでは、脳内Na+, K+-ATPase活性低下が抑制された。 4. Rostafuroxinを連日経口投与されたマウスのBUN (血中尿素窒素) 値やクレアチニン値は、CKDモデルマウスと同レベルであった。 これらの結果から、RostafuroxinはCKDモデルマウスの腎機能を改善する作用はないが、脳内Na+, K+-ATPase活性の低下を抑制することで、不安症状や社会性の低下を改善できる可能性が示唆された。
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