腫瘍組織内は脆弱な血管が不規則に走行しており血流に乏しい。そのため、抗癌剤の組織分布も悪く、抗癌剤が効きにくい組織環境となっている。これまでにマウス腫瘍移植モデルにおいてプロリル水酸化酵素(PHD)阻害薬を投与すると腫瘍内血管の新生・再構築が生じ、抗癌剤感受性が増強されることを見出している。しかしながら、この現象の細胞・分子機構の詳細については不明である。本研究は、PHD阻害薬による抗癌剤感受性を増強する腫瘍血管の新生・再構築機構を明らかにすること目的に行った。平成29年度は、まず、PHD阻害薬による血管新生・再構築に寄与する細胞について解析・検討を行った。これまでの組織解析の結果よりPHD阻害薬投与により変化する組織である血管に着目し血管新生・再構築に寄与する細胞の検討を行った。その中から候補細胞として血管内皮細胞に注目し、腫瘍内の血管内皮細胞についてPHD阻害薬投与群と非投与群での違いについて検討を行った。また、解析時に血管新生に関与していると考えられる免疫系の細胞であるマクロファージにおいてもPHD阻害薬投与した群で変化する傾向があったため、詳細な解析を進めている。本現象に寄与していると考えられるこれらの候補細胞について、さらに詳細な解析を行っているところである。また同時に、腫瘍組織内からこの候補細胞の単離を試み、候補細胞を担癌マウスに投与することで血管新生・再構築が生じるか否か検証を行っている。
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