研究課題
肥満症および糖尿病は、患者のQOLを大きく損なうだけでなく、脳梗塞・網膜症・腎症などといった重大疾患の要因となるリスクの高い疾患である。また、肥満症や糖尿病とそれらが誘発する慢性疾患は、医療費の増加の大きな要因にもなっていることから、身体的・経済的両面からその予防・治療が重要な課題となっている。そこで本研究では、肥満症および糖尿病の予防・治療に有効な新たな医薬シーズと創薬標的分子の開発を目的とする。そのために天然物エキスから抗肥満・抗糖尿病活性を見出し、その活性物質の単離・構造解析・作用メカニズム解析までを行う。特に本研究では、線虫やカイコといった高等生物を疾患モデルとして用いることで、人に対して効果を示す可能性の高い医薬シーズの探索を目的としている。C. elegansを用いた脂肪蓄積抑制物質の評価法は、Glucose添加によって脂肪蓄積することをこれまでに検討しており、成長阻害の見られなかった5mM Glucoseを含む寒天培地上にサンプル、餌の大腸菌と共に成虫を添加し48時間後に蓄積脂肪量を蛍光顕微鏡を用いて定量した。これまでに本手法を用いて約70種の生薬サンプルを試験し、3種の生薬(No.16,67,72)に活性が認められた。中でも、No.16においてはGlucose添加、非添加群ともに80%程度の脂肪蓄積抑制活性が認められ、線虫の成長阻害も特に見られなかったことと、No.16の薬効として、代謝をよくすることがしられているので、その影響の可能性もありますが、今後引き続き検討が必要だと考えている。また、日本にはない植物であるCadaba rotundifoliaより、数種のフラボノイドおよびその配糖体がAGEs形成阻害活性を有しており、糖尿病合併症に対する医薬リード化合物の候補物質を見出した。
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