研究実績の概要 |
我々は、オレアノール酸 (OA) のC3位にグルコースが結合したサポニン誘導体であるOA 3-グルコシド (OA3Glu) を、抗メチル水銀 (MeHg) 活性を持つ化合物として見出している。本研究ではまず、OA3Gluのin vivoにおけるMeHg毒性抑制作用の検証を行った。 以前の検討で、比較的低濃度のMeHg (1.0 mg/kg) を、マウスに投与した際、OA3Gluは種々の臓器における水銀蓄積量を減少させたため、本研究では高濃度 (2.5, 5.0 mg/kg) のMeHgばく露に対するOA3Gluの効果を検討した。週5回、4週間にわたりマウスにOA3Gluを前投与し、その1時間後に2.5, 5.0 mg/kgのMeHgを経口投与したところ、2.5, 5.0 mg/kgどちらのMeHg投与群においても、MeHg投与により生じた運動障害がOA3Gluの前投与により軽減する傾向が認められた。また、5.0 mg/kg MeHg投与群において、OA3Gluの前投与により生存期間の延長が認められた。さらに、投与終了後に脳スライス標本を作製し、興奮性シナプス後電位 (fEPSP) を測定したところ、2.5 mg/kg MeHg投与群において低下していたfEPSPが、OA3Glu前投与によりコントロール群と同程度まで回復した。以上の結果よりOA3Gluはin vivoにおいてMeHgによる神経障害を軽減させる作用を持つことが示唆された。 また、OAに結合する糖の部位(C3位、C28位) や糖の種類 (グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、フルクトース等) の異なるサポニン誘導体を合成し、これら化合物の抗MeHg活性の評価に着手した。
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