研究実績の概要 |
我々は前年度に、オレアノール酸 (OA) のC3位にグルコースが結合したサポニン誘導体であるOA 3-グルコシド (OA3Glu) がin vivoにおいてMeHgの臓器蓄積を抑制すること、MeHgによる神経伝達障害を軽減することを示し、OA3Gluが抗メチル水銀 (MeHg) 活性を持つ化合物として見出した。 前年度よりOAに結合する糖の部位(C3位、C28位) や糖の種類 (グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、フルクトース等) の異なるサポニン誘導体を合成したため、本年度はこれら化合物の抗MeHg活性の評価を進めた。まず、OA3GluとはOAに結合する糖の部位が異なるOA 28-グルコシド、OA 3,28-グルコシド、さらに骨格であるOAについてMeHg毒性抑制作用をin vitroにおいて検討した。Caco-2細胞にMeHgをばく露し細胞内MeHg量を測定し、さらにMTTアッセイにより細胞生存率を測定したところ、これらの化合物はOA3Gluとは異なりMeHgの細胞内取り込み、およびMeHgによる細胞死をほとんど抑制しなかった。このことからOAのC3位への糖の結合が抗MeHg活性に重要であることが示唆されたため、次にOAのC3位に結合する糖の種類が異なるOA 3-ガラクトシド、OA 3-マンノシド、OA 3-キシロシド、OA 3-フルクトシドについて抗MeHg活性をOA3Gluと比較した。MTTアッセイによりMeHgによる細胞死に対するこれらの化合物の効果を検討したところ、OA 3-ガラクトシドは、OA3Gluと同程度の細胞死抑制が認められた一方で、OA 3-マンノシド、OA 3-キシロシド、OA 3-フルクトシドは活性が弱かった。以上より、OAサポニン誘導体は、OAのC3位にグルコースもしくはガラクトースが結合することで高い抗MeHg活性を示すことが示唆された。
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