研究課題/領域番号 |
17K15469
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
稲橋 佑起 北里大学, 感染制御科学府, 特任助教 (70645522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 植物由来放線菌 / 二次代謝産物 / 生合成 / 異種発現 |
研究実績の概要 |
7科17属に属する植物由来希少放線菌18株のゲノムから新規二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの探索を行い、Acrocarpospora sp. K10-0603の生合成遺伝子クラスターから二次代謝産物の単離精製を行った。 K10-0603株のゲノムシークエンスをantiSMASHで解析し、NRPSおよびPKS を含む2種類の生合成遺伝子クラスターを異種発現候補として選択した。NRPSを含む生合成遺伝子クラスターをプラスミドpYIK3にクローニングすることでpYIK3-603C7を作製し、異種発現用宿主であるStreptomyces属放線菌に導入した。さらに、当遺伝子クラスターに含まれるSARP family転写制御因子を発現用ベクターpOSV556にクローニングすることでpOSV556-603C7SARPを作製し、異種発現用宿主に導入した。両ベクターを導入した株の培養液をHPLC解析することで、空ベクター導入株の培養液には無いピークが確認された。本ピークは遺伝子クラスター(pYIK3-603C7)のみを導入した株では確認されなかったことから、本遺伝子クラスターの発現はSARP familyの転写制御因子によって正に制御されていることが示唆された。シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびODSカラムクロマトグラフィーを用いて本ピークを単離精製し、NMRおよびMS解析により構造解析を行った結果、その構造を分子内にヘミアミナールを有する新規環状テトラペプチドと決定した。今後は本物質の量上げを行い、生物活性評価を行う。一方、PKSを含む生合成遺伝子クラスターをpYIK3にクローニングし、異種発現用宿主に導入した。遺伝子クラスター導入株の培養液をHPLC解析することで、空ベクター導入株の培養液には無いピークが確認された。今後は本物質の単離精製、構造解析および生物活性評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き7科17属に属する植物由来希少放線菌18株のゲノムから新規二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの探索を行い、1株(Acrocarpospora sp. K10-0603)の生合成遺伝子クラスターから二次代謝産物の単離精製を行い、NRPSを含む遺伝子クラスターの産物の単離精製および構造解析を行うことでその構造を新規環状テトラペプチドと決定した。また、PKSを含む遺伝子クラスターを異種発現することでその産物をHPLCで検出できた。今後は本物質の単離精製、構造解析および生物活性評価を行う予定である。また、他の放線菌のゲノムについても同様に解析し、新規二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの探索を行う。
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今後の研究の推進方策 |
1) Acrocarpospora sp. K10-0603のPKSを含む遺伝子クラスターK10-0603C14の産物の単離精製、構造解析および生物活性評価を行う。 2) 7科17属に属する植物由来放線菌18株のゲノムから新規二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの探索を行う。選択した生合成遺伝子クラスターを異種発現させ、その産物の単離精製、構造解析および生物活性評価を行う。 3) 活性を有する化合物について生合成遺伝子の改変を行い、生産量の向上および高活性な化合物への変換を試みる。まず遺伝子改変の第一候補として、植物由来希少放線菌Actinoallomurus fulvus K09-0307が生産する抗トリパノソーマ活性物質actinoallolide Aの生合成遺伝子クラスターを使用する。本遺伝子クラスターは、Streptomyces属放線菌で異種発現が可能であるものの、異種発現における生産量が低いため、プロモーターや転写調節因子などを利用し、生産量の向上を図る。次に、PKSの基質を認識するATドメイン等を改変することでactinoallolide類縁体の取得を試みる。
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