本申請課題では限りある天然資源を有効活用するために、既存の生薬抽出エキスを Aspergillus 属真菌で変換することにより、新たな多様化エキスライブラリを構築することを目的としている。今回、生薬 20 種の熱水抽出エキスを添加したポテトデキストロース培地を用い、Aspergillus fumigatus、A. niger および A. oryzae を培養し、各培養エキスを得た。なお、培養日数の違いによる含有成分の変化を観測するため、3、5、8 および 11 日間培養を行った。培養後、得られた培養エキスの HPLC 分析を行ったところ、数種の多様化エキスで HPLC プロファイルが変化していることが判明した。本研究により既に十分研究がなされている生薬エキスと一般的な真菌であるの組み合わせにより新たな価値を有する多様化エキスの産生を達成した。 また、培養前後で特徴的な成分変化を示したものは変化した物質の特定を行った。例として、ダイオウ抽出エキス含有培地で A. oryzae を培養した際には 4-(p-hydroxyphenyl)-2-butanone が 2-(p-hydroxyphenyl)-ethanol に代謝された。本反応は Beauveria bassiana によるものが既に報告されており、Baeyer-Villiger 酸化によりなされると報告されている。A. oryzae からは本反応を触媒する酵素は発見されていないため、A. flavus より単離されている Baeyer-Villiger monooxygenase と類似する酵素が今回用いた A. oryzae 中に存在するか検索したところ、ほぼ同一の配列を示す機能未決定の酵素が存在した。以上より、多様化エキスの研究を行うことにより、新たな有用物質だけではなく、有用酵素の発見にもつながると考えられる。
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