研究課題/領域番号 |
17K15475
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
山室 匡史 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (80646555)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大麻 / 系統分類 / SNPマーカー / 含有成分プロファイル / 裁判化学 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、大麻のSNPマーカー探索に向けて、①大麻DNAの抽出及び②次世代シーケンシング解析の予備実験を行った。 ①前年度収集した各種大麻サンプルからDNA抽出を行い、100種類近くのDNAサンプルを用意することができた。 ②本研究で採用する次世代シーケンシング解析について、予備実験として、一部のサンプルに対して適用することを試みた。上記で抽出したDNAの中から、薬物種大麻22サンプル、日本在来種大麻14サンプル、健康食品(種子)6サンプル、ペットフード(種子)2サンプル、漢方薬(麻子仁)1サンプル、麻繊維2サンプル、麻幹1サンプルの計48サンプルを対象として選定し、次世代シーケンシング解析の1種であるMultiplexed ISSR Genotyping by Sequencing(MIG-seq)法の適用を行った。その結果、一部のサンプルに対する限定的な解析ではあるものの、予備実験の段階で多くのSNPを検出することに成功し、本法の有効性が確認された。さらに、作成された系統樹から、「日本在来種大麻は、他国で栽培されている健康食品の大麻種子や嗜好用に用いられる薬物種大麻と大きく異なるグループに属する」「繊維に用いられている麻でも、タイ産とネパール産は大きく異なる系統である」「SNP情報から得られる系統グループは、活性型THCA合成酵素遺伝子の有無による区分とは全く一致しない」等、大麻系統分類に資する非常に興味深い情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析手法として、従来予定していたRAD-seq法からMIG-seq法への切り替えを行うことになったが、その検討に時間を要した。また、前年度に収集した大麻サンプルからのDNA抽出に関して、麻繊維の製品からの抽出が非常に困難であることが判明し、最終的に2製品から高品質のDNAを抽出することに成功したものの、その工程に想定外の時間を要した。以上の事由から、本来予定されていた化学分析(含有成分プロファイルの獲得)に着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の予備実験において、適用可能であることが確認されたため、次世代シーケンシング解析であるMIG-seq法を適用し、大麻の系統分類及びSNP探索を試みる。 さらに、それと並行して各種大麻サンプルに対して化学分析を行い、含有成分プロファイルを獲得し、DNA情報との相関について解析していく予定である。なお、種子や繊維等の製品については、大麻特有の成分をほとんど含有しないため、有効な含有成分プロファイルが得られないと考えられることから、入手可能な範囲で、大麻葉のサンプルを追加していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の原因は、物品費に大幅な未使用額が生じたことである。計画立案段階においては、次世代シーケンシング解析としてRAD-Seq法の実施を予定しており、その準備(DNAライブラリー作製等)のために必要な消耗品をはじめとする物品費を計上していた。しかしながら、文献調査の結果、より安価かつ効率的な解析手法であるMIG-Seq法が確認されたため、MIG-Seq法の適用を検討することとなった。その検討に時間を要したために、研究全体にやや遅れが生じており、このことも未使用額発生の原因となっているが、平成30年度にMIG-seq法による解析を外部機関に委託したところ、RAD-seq法より安価に、有効な結果が得られることが確認されたことから、未使用額は翌年度分の助成金と合わせ、MIG-seq法による解析実施のために使用する予定である(なお、RAD-seq法より安価で解析できることから、サンプルをさらに増やして解析を行うことが可能となり、より詳細な系統情報が獲得できるものと期待される)。
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