研究課題
令和2年度は、収集した大麻サンプル96点について次世代シーケンサーを用いたMIG-seq解析を行った。平成30年度に実施した48サンプルのデータと統合した上でSNPを探索したところ、総リード数155,034,315の配列から24135箇所のSNPが検出された。SNP情報に基づいて系統樹を作成したところ、遺伝的背景の類似性に基づいた特徴的な複数のグループが確認された。注目すべき新規知見として、①カナダ産の健康食品に用いられている銘柄はインディカ種に近い系統であった、②北海道の野生産大麻は、本州の日本在来種の銘柄と全く異なるグループに属し、むしろ欧米産の繊維種大麻と近いグループであった(ただし、北海道の野生産大麻は薬物種)、③国内で流通する大麻種子製品(鳥餌、健康食品)の内、テトラヒドロカンナビノール酸合成酵素が活性型である中国産の製品とオーストラリア産の製品は互いに近い系統であった、④国内唯一の繊維種銘柄であるとちぎしろは、日本在来種を改良したものであり、非常に近いグループであることが確かめられたが、日本在来種は全て薬物種であり、含有成分プロファイルは系統の類似性と一致していなかった、⑤実際の事件で押収された銘柄不明の大麻種子の解析の結果、同一事件由来のものや同一パッケージのものは近いグループに布置され、特定の海外嗜好品銘柄と類似性が示されたサンプルが確認された、といった点が挙げられる。さらに、日本産大麻(北海道野生種を除く)に特徴的なSNPに着目し、アレル特異的PCR用プライマーの設計を行ったところ、薬物種・繊維種の違いに依存せず国産大麻を識別できる迅速検査系が確立された。今後、亜種、産地、銘柄、地域等、異なる目的での大麻分類に有用と期待されるSNPの絞り込みを行い、同様の検査系を複数構築することで、目的に応じた様々な識別検査が可能となることが期待される。
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Forensic Sci. Int.
巻: 318 ページ: 110634
10.1016/j.forsciint.2020.110634