研究課題
当該年度においては、in silicoでの癌細胞の細胞移動評価システムを軸として、計画した各種研究項目(1)in silico細胞移動評価システムの肝細胞癌細胞への適用、(2)in silico細胞移動評価システムと化学療法剤による抑制効果の適合を実施した。種々の肝細胞癌細胞の浸潤を経時的に観察し、確立したin silico細胞移動評価システムにおいてその細胞の挙動を入力したところ、細胞の移動に関するデータが蓄積され、細胞の移動評価を予測するin silicoシステムの正確性が増強された。一方で、特性の大きく異なる癌細胞を用いた場合は、当該in silicoシステムによる癌細胞の移動予測評価の精度は低下することも判明した。従って、当該in silicoシステムによる癌細胞の移動予測には、特性の類似した癌細胞の移動データの蓄積が必要であると考えられた。現在、より多くの肝細胞癌種の移動データの蓄積を実施し、当該in silicoシステムの移動評価の精度の向上を図っている。加えて、研究項目(2)in silico細胞移動評価システムと化学療法剤による抑制効果の適合に関して、現時点でのin silicoシステムを適用して細胞の移動評価を試みたところ、化学療法剤によって細胞の移動が抑制される結果をin silicoで予測することは可能であった。その細胞移動の予測評価においては、化学療法剤の濃度依存的な抑制効果の差を評価することも可能であった。以上の結果から、特性の類似した癌細胞の移動データの蓄積を実施すれば、当該in silicoシステムは肝細胞癌細胞の移動及び化学療法剤によるその抑制効果を評価することが可能であると示唆される。
3: やや遅れている
本研究課題においては、研究項目(1)in silico細胞移動評価システムの肝細胞癌細胞への適用、(2)in silico細胞移動評価システムと化学療法剤による抑制効果の適合に関する研究について当初の予想以上にデータの蓄積が必要であることが判明し、予定していた研究項目(3)in silico細胞移動評価システムの肝内転移評価への応用の実施には至らなかった。従って、本研究課題の進捗は、当該年度終了時点でやや遅れていると判断される。
引き続き、研究項目(1)in silico細胞移動評価システムの肝細胞癌細胞への適用、(2)in silico細胞移動評価システムと化学療法剤による抑制効果の適合に関する研究を実施し、肝細胞癌細胞の移動に関するデータを蓄積し、予測評価の精度向上を図る。加えて、研究項目(3)in silico細胞移動評価システムの肝内転移評価への応用を実施し、これまでに確立されていないin vivo肝内転移評価モデルのin silico細胞移動評価システムへの代替法の確立を目指す。
当該年度においては、当初の計画よりも外部への移動の機会が少なく、本研究費からの旅費の出費がなかった。当該次年度使用額は、本研究により生じた成果の発表にかかる旅費等に使用する計画である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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