平成30年度は、前年度に新規合成したチオグアニンリガンドとAPサイトを有するオリゴデオキシヌクレオチド (ODN) との反応を詳細に解析した。 チオグアニンリガンドとAPサイトアナログを有するODNとの光反応による共有結合形成については、光反応産物をHPLCにより単離精製したのちに酵素加水分解を行う事でヌクレオシド単位まで分解し、更に天然ヌクレオシドを除く新規ピークを単離精製して光反応産物の詳細な構造を解明しようと試みた。HPLCによる単離精製と続くMALDI-TOF/MSによる分子量測定からは目的とする光反応産物の詳細解明には至らなかったが、対照実験として天然グアニンを有するリガンドを用いてAPサイトアナログを有するODNとの光反応実験を行ったところ、チオグアニンリガンドとは異なり全く反応が進行しなかった事から、本反応には設計通りチオカルボニル部位及び光照射が必須であり、反応点はチオカルボニル部位である事を明らかにした。 また、チオグアニンリガンドのAPサイトを有するODNに対する部位特異的切断能については、チオグアニン部とポリアミン部をつなぐ炭素リンカーの長さが3炭素および5炭素分のもの、対照実験として天然グアニン塩基を有するリガンドの3つのリガンドについて比較検討した。ゲル電気泳動による反応産物の解析から、チオグアニンリガンドのポリアミン部によるβ-脱離反応の促進とともに、チオカルボニル部位はAPサイトのβ脱離体と光照射を必要とせずに共役付加を起こしている可能性がある事を明らかにした。更に、APサイトのβ-脱離促進と共役付加反応においては、チオグアニン部とポリアミン部をつなぐリンカーが5炭素のもので効率よく起こり、APサイト内でのチオグアニン部の自由度が反応に影響する事を明らかにした。
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