研究課題/領域番号 |
17K15483
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
進藤 直哉 九州大学, 薬学研究院, 助教 (20722490)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コバレント阻害剤 / CFA / EGFR / NSCLC / キナーゼ阻害剤 |
研究実績の概要 |
コバレント阻害剤は求電子的反応基を持ち、標的タンパク質との共有結合により強力で持続的な薬効を発揮する。特に近年、標的タンパク質と選択的に反応するよう論理的にデザインされたコバレント阻害剤 (TCI) が盛んに研究されている。現在のTCI開発では、標的タンパク質のシステイン残基に対する反応基としてもっぱらマイケルアクセプターが用いられるが、その標的選択性は必ずしも十分ではない。これに対し我々は、クロロフルオロアセタミド (CFA) 基が穏やかにチオール基と反応することを見出し、標的タンパク質に対して高選択的な新規コバレント阻害剤への応用を検討してきた。 本研究は、CFA基を用いた新規不可逆的EGFR阻害剤の創出を目的としている。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤はEGFR変異陽性非小細胞肺癌の治療に用いられるが、可逆的薬剤に対しては投薬開始から約一年で獲得耐性が生じる。これに対しマイケルアクセプター型のTCIが開発され、ATPポケット近傍のCys797と共有結合することで可逆的薬剤耐性の克服に成功したが、副作用が問題となる場合がある。そこで、反応基としてCFA基を有する新規阻害剤を開発することとした。当該年度はCFA基を有する化合物の合成と、細胞増殖阻害アッセイによる活性評価を行なった。阻害剤の構造は既承認薬のオシメルチニブを鋳型とし、ピリミジン骨格上の置換基やCFA基と骨格を繋ぐリンカー構造を検討した。細胞増殖阻害アッセイには、可逆的薬剤耐性のEGFR-T790M変異体を発現するH1975細胞と、野生型EGFRを発現するH292細胞の二つの細胞株を用い、H1975細胞に対してのみ強い増殖阻害活性を示す化合物を探索した。種々構造最適化の結果、H1975細胞に対してオシメルチニブと同等の増殖阻害活性を示す一方、H292細胞に対する阻害活性が低い化合物を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の検討で、細胞を用いたアッセイにおいて既承認薬のオシメルチニブと同等以上のEGFR-T790M変異体阻害活性、および高いT790M/野生型選択性を示す化合物を同定しており、本研究はおおむね順調に進展していると言える。さらに、マウスモデルを用いた抗腫瘍活性試験も既に一度実施し、同定した化合物がin vivoでも腫瘍の増殖をコントロールと比較して有意に抑制することを確認した。しかしながら、オシメルチニブと比較するとin vivoでの抗腫瘍活性が低く、さらなる改善の必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
同定した化合物が細胞系アッセイでは良好な結果を示したにも関わらず、in vivoでの抗腫瘍活性が不十分であった理由について、代謝安定性など様々な視点から検証を行う。検証結果に基づいて、in vivoでの抗腫瘍活性向上を目指した阻害剤構造の改変を実施する。特に、CFA基と阻害剤骨格を繋ぐリンカーの構造を重点的に検討し、in vivoでもオシメルチニブと同等の抗腫瘍活性を示すCFA型コバレント阻害剤の創製を目指す。
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