今年度は、昨年度までに獲得した14残基からなるペプチド誘導体(DF-100)のマイオスタチン選択性に関して検討した。マイオスタチンの他に、TGF-βスーパーファミリーリガンドとしてアクチビンA、TGF-β1を用い、各々で濃度依存性評価をルシフェラーゼレポーターアッセイ系にて実施した。DF-100は、アクチビンAとTGF-β1に対しては、明確な阻害作用を示さなかった。一方で、マイオスタチンに対しては、リードペプチド2よりも2.5倍良好な阻害能を示し、マイオスタチン選択性を有することが確認された。しかしながら、その阻害能はIC50値としてsub-nMには到達していないことから、更なるマイオスタチン阻害活性の選択的向上を目指す必要があるのではないかと考えられる。また、リードペプチド2を含め、DF-100などの一連の活性誘導体は、水溶性の改善が課題として残っている。昨年度に引き続き、ペプチド末端への可溶化配列の導入を試みたが、マイオスタチン阻害活性の顕著な減弱が認められ、活性保持と水溶性改善の両立が難しいことが示唆された。物性改善は、信頼性の高い二次構造解析や生体内安定性解析を遂行するために必要であり、継続して取り組む必要があると考えられる。 以上の検討と並行して、フォリスタチン由来マイオスタチン阻害ペプチド(リードペプチド2)の同定とその分子機能に関する論文を執筆し、12月に受理された。また、国際シンポジウムにおいても当該成果を招待講演にて公表した。
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