研究課題/領域番号 |
17K15490
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
一條 知昭 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (20513899)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境微生物 / 環境疾患 / 非結核性抗酸菌 |
研究実績の概要 |
非結核性抗酸菌症の感染源として考えられている、土壌環境における非結核性抗酸菌について、存在する非結核性抗酸菌の網羅解析(群集構造解析)、現存量測定を進めた。試料は環境の異なる複数の土壌表面とし、西日本の2地点から合計30試料を採取した。アンプリコンシーケンスには非結核性抗酸菌を種レベルで分類可能であるhsp65遺伝子を、定量的PCR法による抗酸菌の現存量測定はatpE遺伝子を標的とした。対象とした土壌において細菌、抗酸菌の現存量はそれぞれ107~109 cells/g、105~107 cells/gであり、乾燥している試料を除き、抗酸菌は全細菌に対し0.1~10%の比率で存在していることがわかった。また、群集構造解析により多様な種の非結核性抗酸菌が存在していることが明らかとなった。これらのうち、臨床上重要なMycobacterium aviumに着目したところ、今回対象とした土壌には幅広く存在することを見出し、また複数の試料からはM. aviumが培養法による分離された。 また、得られた非結核性抗酸菌の群集に関するデータを詳細に解析したところ、真核生物内での生残に必要とされる遺伝子を保有する種類の非結核性抗酸菌が、ある特定の環境において優占していた。このことは、環境中の非結核性抗酸菌の全体像を理解するためには、非結核性抗酸菌のみ標的とするのではなく、真核生物も含め解析する必要性を提示するものである。現在は、真核生物の解析にむけた系の構築に向けた予備検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画として、エアロゾルを発生しうる環境における非結核性抗酸菌の実像を、先行研究により構築した分子微生物生態学的手法を駆使して解明し、増殖しやすい環境について考察することとしていた。 非結核性抗酸菌の生理活性については継続的に解析を進める必要があるが、当初計画のとおり土壌試料を対象として非結核性抗酸菌の実像が理解できつつあり、真核生物との関係の重要性を示唆するデータも得られている。以上のように着実に実験データを蓄積しており、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上記の研究を継続し、環境と真核生物、非結核性抗酸菌との関係を詳細に検討し、非結核性抗酸菌のホットスポット、ニッチェの解明、さらにはその背景となる環境要因を統合的に理解しする。 具体的には、非結核性抗酸菌叢、真核生物叢、真正細菌叢、生理活性を超並列シーケンサーを用い、解析を進める。
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