非結核性抗酸菌症の感染源として考えられている、土壌環境における非結核性抗酸菌について、昨年度の研究成果として得られた非結核性抗酸菌の網羅解析(群集構造解析)の結果を踏まえて、今年度は他の細菌や真核生物も含めた解析を進めるとともに、環境中に存在する非結核性抗酸菌の分子疫学的解析を行った。 試料は環境の異なる複数の土壌表面とし、西日本の2地点から合計30試料を採取した。アンプリコンシーケンスには非結核性抗酸菌を種レベルで分類可能であるhsp65遺伝子を、細菌の解析には16S rRNA遺伝子を、真核生物の解析には18S rRNA遺伝子をそれぞれ標的とした。 その結果、(1)Mycobacterium属菌の群集構造をアンプリコンシーケンスにより解析したところ、土壌環境には多様な種のNTMが存在し、M. avium、M. gordnaeは今回対象とした土壌には普遍的に存在していること、(2)M. aviumやM. gordnaeの存在割合と今回測定した物理化学的因子それぞれとの間には関連は見られないこと、(3)Mycobacterium属菌の群集構造と関連する細菌グループは見られなかったこと、(4)Mycobacterium属菌の群集構造にはサンプリングサイトとの関係が示唆されること、(5)M. aviumや M. gordnaeはある種の真核生物の存在と関係が示唆されること、を見出すことができた。
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