研究課題/領域番号 |
17K15495
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
藤木 恒太 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80632504)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カドミウムストレス応答 / 細胞死 / ALK4/5 / 近位尿細管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
カドミウムは、今なお喫煙や採鉱時に呼吸器を経由して曝露され、その結果、腎臓や肺などの組織において、機能障害、癌を誘引することが報告されている日常の環境汚染物質である。培養細胞や個体レベルの実験系から、高濃度カドミウムを急性曝露すると、細胞レベルで細胞死が誘導される一方、長期間カドミウムを曝露すると、細胞の癌化が誘導されることが報告されているが、その毒性発現メカニズムの詳細は未だ解明しきれていない。そこで、本研究では、腎組織の一つであるヒト近位尿細管上皮細胞(HK-2細胞)に対し、カドミウムを曝露した時に惹起される細胞死メカニズムの解析を行うことにした。 これまでに解析を行った結果、HK-2細胞にカドミウムを曝露すると、アポトーシス様の細胞死とネクローシス様の細胞死が同時に惹起されることが分かった。また、リン酸化酵素阻害剤を中心とした様々な阻害剤のカドミウムによって惹起される細胞死に対する影響を検討した結果、ALK4/5阻害剤によって、カドミウム曝露依存的に誘導される細胞死が顕著に抑制されることがわかった。また、カドミウム曝露依存的なALK4/5シグナルの活性化も観察された。このことは、カドミウム曝露依存的にALK4/5シグナルが活性化され、細胞死が促進されていると考えられる。さらに、カドミウム曝露依存的なALK4/5シグナルの活性化にはリガンドを必要としないこともわかった。現在はALK4/5シグナル上流、下流で機能する因子の詳細な解析を進めている。 一方、FAK阻害剤で処理すると、カドミウム曝露によって誘導される細胞死の様相の変化が認められた。しかしながら、FAKをノックダウンしてもそのような効果が認められなかったため、現在はこの解析は止めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に記載したFAKの機能解析としては、なかなか困難な状況となっている。しかし、カドミウムに曝露されたHK-2細胞の細胞死の特性の解析、またそこに関与するALK4/5シグナルの解析、さらにALK4/5シグナル周辺で機能する新たな因子の探索が順調に進んでいる。そのため、当初の計画書に記載していたように、現在は順調に進展しているALK4/5シグナルのカドミウムストレス応答における機能解析を深化させており、おおむね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、現在順調に進捗している実験について重点的に解析する。具体的には、カドミウム曝露されたHK-2細胞において、ALK4/5シグナル周辺で機能する因子の検討をおこなう予定である。また、近位尿細管上皮細胞において細胞死を誘導するカドミウム以外のストレス(浸透圧ストレス、シスプラチンなど)曝露時とカドミウム曝露時のALK4/5シグナルの機能や活性の変化を比較検討する予定である。加えてこれらの解析が終了次第、論文として投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は、実験の変更に付随して購入する物品を変更し、多少の使用額の変化が生じたが、ほぼ申請額と同等の使用額となっている。 (使用計画) 次年度以降は、先に提出した計画から大きな変更なく使用していく予定である。
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