食品中の機能性成分、食品添加物、残留農薬などの有機化合物の含量は、品質評価における重要な値の一つとして扱われる。多くの場合、試料となる食品の抽出物は、複数の成分が共存したものである。したがって、定量法には、分離分析に優れたクロマトグラフィーが広く利用されている。しかし、クロマトグラフィーから得られる分析値の信頼性は、使用した分析種の標品の純度に依存する。本研究は、定量用標品の拡充が遅れている食品衛生分野において、分析値の信頼性を確保するための検討を行っている。具体的には、定量NMR(qNMR)を用いて、クロマトグラフィー条件下における代替定量用標品に対する分析種の相対モル感度(RMS)を決定し、分析種の定量用標品不要なクロマトグラフィー(RMS法)を確立する。 今年度は、天然酸化防止剤ローズマリー抽出物の品質評価へ応用した。昨年度に検討した手順にしたがい、認証標準物質が市販されているジフェニルアミン(DPA)を代替定量用標品として、HPLC/PDAにおけるDPAに対する抗酸化物質カルノソール(CL)およびカルノシン酸(CA)のRMSを決定した。ローズマリー抽出物を試料として、確立したRMS法を評価した。従来法である検量線法から求めたローズマリー抽出物中のCLおよびCA含量を100としたとき、DPAを内標準とするRMS法から得られた相対含量は97~98(CL)、101~103(CA)であった(検量線は、qNMRでCL試薬およびCA試薬の純度を決定し、その純度を考量して作成した)。 RMS法は、その正確性はもちろん、定量用標品が入手できない場合のクロマトグラフィーとして運用が可能であった。したがって、代替定量用標品や分析条件の情報を共有することで、定量用標品供給不足の問題にとらわれることなく、RMS法を公的な分析法として展開することが期待できた。
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