研究課題/領域番号 |
17K15497
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
疋田 智也 愛知県がんセンター(研究所), 感染腫瘍学部, 研究員 (20600935)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイコプラズマ / HB-EGF |
研究実績の概要 |
がんの発生や悪性化には様々な遺伝・環境要因が関与しているが、その一因としてウイルスや細菌、寄生虫などの感染が挙げられる。このような感染を背景とする感染がんは、感染性因子の除去により発がんプロセス進展阻止が可能ながんである。そのため、がん感染性因子の同定及び詳細な発がん・がん進展機構の解明は、がん治療や予防の観点から極めて重要である。我々はこれまでに、マイコプラズマ(M.hyorhinis:マイコプラズマ・ハイオリニス)感染が増殖因子 HB-EGFの発現亢進を介してがん悪性化に関与することをin vitroの実験系で明らかにしている。しかし、実際のがん病態進行においてマイコプラズマ感染が関与しているかは明らかではない。そこで本年度は、がん感染性因子としての重要性を証明するため、優れたマイコプラズマ抗体を用いた詳細かつ大規模な組織染色解析、および生体内での感染動態解析を中心に行うこととした。組織染色可能な抗体を取得するため、PPLO 培地で純培養したマイコプラズマをパラホルムアルデヒドで固定したものを抗原とし、腸管リンパ節法によりマウスモノクローナル抗体を作製した。M.hyorhinis感染細胞に特異的に高い反応性を示すハイブリドーマを8クローン取得することができた。また、感染経路および感染動態を生物発光イメージングにより解明するため、自家発光可能なマイコプラズマ株の樹立を行った。 自家発光可能なluxABCDE オペロンをマイコプラズマゲノム上に挿入する方法を試みたが、陽性株を取得することができなかったた。そこで、遺伝子工学的な手法ではなく、バクテリア膜上に存在する陰イオンリン脂質をラベル可能な XenoLight Bacterial Detection Probe 750 を用いて、マイコプラズマの標識を行い、イメージングに使用可能なマイコプラズマ株の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、マイコプラズマ感染の臨床学的重要性を明らかとするため、① 腫瘍組織を用いた感染の検出、②生体内における感染動態の解析、を中心に実施する予定としていた。これらの解析を行うに必要な抗体や菌株を樹立することはできたが、実際の解析までは行うことができなかった。しかし、解析対象とする組織サンプルはすでに準備できており、条件検討が終わり次第、実施予定にしている。以上の内容から、進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、S/N 比および特異性の高いマイコプラズマ抗体を得ることに成功した。現在、多数のヒト腫瘍組織を染色する準備をしているところであるが、今回得られた抗体により詳細な感染割合や、感染部位の特定を行うことができると期待している。また、現 在標識したマイコプラズマ菌体を用いて、経口および経膣経路による感染動態の解析を行っている。解析ツールの準備が完了したため、これらを用いて腫瘍における感染の有無や感染部位の特定および感染動態の解明を行い、がんにおけるマイコプラズマ感染の関与について明らかとしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマイコプラズマ感染の検出と感染動態の解析までを目標としていた。しかし、解析に必要な抗体や菌株の作製までは実施できたものの、実際の解析までは進むことができなかった。そのため、解析に使用する組織染色関連の物品およびマウスの購入を行わなかったため、次年度への繰越金が生じてしまった。
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