ヒト全癌死亡の約 20%は感染を背景とする感染がんが占めると考えられている。このため、がん感染性因子の同定及び詳細な発がん・がん進展機構の解明は、がん治療や予防の観点から極めて重要である。我々はこれまでに、マイコプラズマ(M.hyorhinis:マイコプラズマ・ハイオリニス)が増殖因子HB-EGFの発現亢進を誘導し、がん悪性化に関与することを細胞レベルで明らかにしてきた。本研究では、がん進展におけるマイコプラズマの関与を個体レベルで明らかにするため、組織染色に使用可能な抗マイコプラズマ抗体の作製、およびマイコプラズマのin vivo発光イメージングシステムの構築を中心に行った。PFA固定マイコプラズマを抗原とし、腸管リンパ節法によるモノクローナル抗体作製を実施し、有用な抗体の取得に成功した。また、近赤外蛍光試薬 XenoLight Bacterial Detection Probe 750 を用いて、マイコプラズマの蛍光標識を行い、in vivoイメージングが可能であることを見出した。最終結果の取得までは至らなかったが、現在、樹立した抗マイコプラズマ抗体やイメージングシステムを用いて、マイコプラズマ感染のがんへの関与を、生体レベルで解析しているところである。
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