本研究では、炎症刺激時に発現量が大きく上昇するSLC-X (SLC2A6) の個体レベルでの重要性解析、及びその分子機構解析を目的としている。前年度までに、本トランスポーターに関して、ノックアウトにより、(1) lipopolysaccharide (LPS)の腹腔内投与時の生存が低下すること、(2) マウス腹腔内マクロファージにおいてLPS刺激による解凍系の亢進が減弱すること、などを見出している。最終年度である本年度は、上述のようなSLC2A6の機能が必要とされる環境に関する知見を得るべく解析に取り組んだ。SLC2A6はLPS刺激などの炎症刺激により、転写レベルで発現量が大きく上昇する。LPSはToll-like receptor (TLR)4の代表的なリガンドであることから、TLR4シグナリングの重要な効果器である転写因子RelAに着目した。GEO datasetより、マクロファージに対してLPSなどの炎症刺激をした際のRelAによるChIP-seqデータを入手し、SLC2A6遺伝子近傍を調査したところ、プロモーター領域近傍や、一部のイントロン領域にてRelAの結合が認められた。これらの領域ではH3K4のメチル化やH3K27のアセチル化が亢進しており、またDNase感受性であること、RNA polymerase IIの結合が認められたことから、エンハンサー領域であることが示唆された。本領域をルシフェラーゼアッセイに供したところ、確かにLPS依存的にルシフェラーゼの活性が認められたことから、本領域がSLC2A6の炎症刺激時における発現量を制御しているものと考えられる。これらの成果をまとめ、国際誌FEBS Lettersに投稿し、2019年1月に受理された。
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