上皮増殖因子受容体 (EGFR) に活性化変異を有する非小細胞肺癌の治療に用いられるアファチニブ、オシメルチニブ等の第2世代、第3世代EGFR-TKIは、治療の継続により耐性癌が出現することが報告されている。そこで、耐性克服のためにこれらEGFR-TKIの耐性メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。前年度までに第2世代EGFR-TKIであるアファチニブに対する耐性メカニズムとしてSFK/FAKシグナルが関与することを示した。そこで本年度は第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブに対する耐性へのSFKシグナルの関与について、オシメルチニブ耐性肺癌細胞株を用いて以下のことを明らかにした。(1) 樹立したオシメルチニブ耐性肺癌細胞株は第1世代EGFR-TKIのエルロチニブや、第2世代EGFR-TKIのアファチニブに対しても同様に耐性であった。(2) オシメルチニブ耐性細胞株ではオシメルチニブ処理によるAKTのリン酸化阻害効果が低下していた。(3) オシメルチニブ耐性細胞株ではSRCタンパクの発現が上昇しており、SRCファミリーキナーゼ(SFK)阻害剤のダサチニブに高い感受性を示した。(4) SRCのノックダウンによってオシメルチニブ耐性細胞株のAKTのリン酸化阻害効果及び細胞増殖抑制効果がみられた。 以上の結果より、第2世代EGFR-TKIと同様に第3世代EGFR-TKIに対しても耐性メカニズムとしてSFKシグナルの関与が示唆された。第2世代、第3世代EGFR-TKIの耐性克服にSFKシグナルの阻害が有効である可能性が示された。
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