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2017 年度 実施状況報告書

乳癌の内分泌治療耐性メカニズムの解明とYB-1を標的とした耐性克服治療薬の創出

研究課題

研究課題/領域番号 17K15508
研究機関九州大学

研究代表者

柴田 智博  九州大学, 薬学研究院, 学術研究員 (40795986)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード乳癌 / YB-1
研究実績の概要

ERα陽性の乳癌患者は全乳癌患者の60%近くを占め、ERα標的のtamoxifenやFulvestrantなどの内分泌治療薬が臨床応用されている。しかし、内分泌治療の経過とともに出現してくる耐性がんは乳癌治療において大きな難関である。我々はこれまでに乳癌細胞においてYB-1がリン酸化を受け核内に移行し、細胞周期関連因子や増殖因子受容体の発現を誘導することを報告している。さらに、現在までにFulvestrant耐性乳癌細胞でYB-1のリン酸化が上昇することを観察している。本研究では耐性がんにおけるYB-1活性化メカニズムを明らかにし、YB-1標的治療薬を創出することを目的とし研究を進め、本年度は以下の点について明らかにした。
(1) Fulvestrant耐性乳癌細胞は、ERα発現低下、HER2発現上昇とともにmTOR/Akt/S6Kシグナルの活性化が観察された。同時に、YB-1のコールドショックドメインとERαのリガンド結合ドメインが結合することでERαのプロテオソームでの分解を促進することを明らかにした。(2) mTORシグナル阻害薬であるEverolimusの感受性について検討を行ったところ、親株と比較しFulvestrant耐性株でEverolimusに対し高感受性を示した。さらに、Everolimus処理によりYB-1リン酸化が著明に抑制された。(3) YB-1のリン酸化がEverolimus処理下の生存に関与するか否かを明らかにするため、YB-1(S102)恒常活性化変異体を作成し検討を行った。YB-1(S102)恒常活性化変異体発現株はEverolimusに対し耐性を示した。
本年度の検討により、YB-1のリン酸化がFulvestrant耐性乳癌細胞の生存に重要であり、YB-1リン酸化シグナルを標的とした薬剤が内分泌治療耐性克服に有用であることを示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度の研究において、①乳癌細胞株において、YB-1のコールドショックドメインとERαのリガンド結合ドメインが結合することで、YB-1がERαのプロテオソームでの分解を促進し、その結果ERα標的薬に対し抵抗性を示すことを明らかにした。②YB-1のリン酸化がFulvestrant耐性乳癌細胞や内分泌治療自然耐性乳癌細胞の生存・増殖に重要であり、YB-1及びYB-1の活性化を標的とした薬剤が乳癌の克服に有用であることを明らかにした。これらの研究成果は当初の計画以上の進展を見せている。

今後の研究の推進方策

本年度の研究において、YB-1及びYB-1の活性化を標的とすることが内分泌治療耐性克服に有用であることを示すことができた。今後、YB-1を標的とした耐性克服治療の創出を以下のように進める。同時に、乳癌患者においてYB-1の治療標的としての有用性を評価する。
①YB-1を標的とした内分泌治療耐性乳癌克服治療の創出を行う。すなわち、(1) Fulvestrant耐性乳癌細胞株を用いた培養細胞系で、作製したYB-1を標的とした遺伝子治療薬やYB-1活性化シグナルであるAKTやERK阻害薬、これまでに同定されたmTOR阻害剤などの単独治療や乳癌治療薬との併用治療で耐性を克服できるか否かを明らかにする。同時に、YB-1標的薬やAKT、ERK、mTOR阻害剤がERαやHER2発現に影響を与えるか否かを明らかにする。(2) Fulvestrant耐性乳癌細胞株を用いた動物治療実験系で、上記で見出されたYB-1標的薬の単独または内分泌治療薬との併用療法により耐性を克服できるか否かを腫瘍体積や生存率などにより評価する。この時、腫瘍内投与、腹腔内投与、尾静脈投与など投与方法の違いによる治療効果も検証する。同時に、治療後の腫瘍についてERα及びHER2発現を免疫組織染色法で検討し、YB-1で制御されるHER2やERα発現と治療効果との関連を明らかにする。
②内分泌治療耐性乳癌患者の治療におけるYB-1の治療標的としての有用性の評価を行う。すなわち、乳癌患者におけるYB-1-ERα-HER2の関連軸と内分泌治療、HER2標的治療、抗がん剤治療などの治療効果との相関について、切除がん組織標本を対象に、乳癌専門臨床医及び病理分野の専門家と協力して基礎-臨床融合研究を進め、YB-1の治療標的としての有用性を明らかにする

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた動物実験が次年度に行うことになったため

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ERαとHER2発現のY-box binding protein-1 (YB-1)による制御と乳癌内分泌治療耐性2017

    • 著者名/発表者名
      柴田智博、渡公佑、河原明彦、和泉弘人、村上雄一、桑野信彦、小野眞弓
    • 学会等名
      第21回日本がん分子標的治療学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Y-box binding protein YB-1は乳癌のERαとHER2発現を制御して内分泌治療耐性2017

    • 著者名/発表者名
      柴田智博、渡公佑、河原明彦、主藤朝也、村上雄一、和泉弘人、伊藤研一、秋葉純、桑野信彦、小野眞弓
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会
  • [備考] 九州大学大学院 薬学研究院 創薬腫瘍科学講座

    • URL

      http://shuyo.phar.kyushu-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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