研究課題
ERα陽性の乳癌患者は全乳癌患者の60%近くを占め、ERα標的のtamoxifenやfulvestrantなどの内分泌治療薬が臨床応用されている。しかし、内分泌治療の経過とともに出現してくる耐性がんは乳癌治療において大きな難関である。我々はこれまでに乳癌患者においてYB-1の高発現がERα発現と負に、HER2発現と正に相関することを報告した。また、YB-1はリン酸化を受けることで核内に移行し、細胞周期関連因子や増殖因子受容体の発現を誘導することが報告されている。昨年度までの研究において、YB-1の活性化が内分泌治療耐性克服に関与することが示された。本年度は、YB-1を標的とした耐性克服治療の創出を進めたところ以下の結果が得られた。(1) Fulvestrant耐性乳癌細胞株において、YB-1リン酸化阻害薬処理によりYB-1の標的遺伝子であるEGFR、HER2、Cyclin B1/D、CDC6の発現が抑制された。(2) Fulvestrant耐性乳癌細胞株の乳腺同所移植治療モデルにおいて、Everolimus投薬により腫瘍体積の有意な抑制効果が観察された。さらに、腫瘍内のリン酸化YB-1発現について免疫染色法及びウエスタンブロッティング法により検討を行ったところ、Everolimus投与群の腫瘍内のリン酸化YB-1発現が著明に抑制された。(3)乳癌患者においてYB-1 mRNA発現とERα mRNA発現に負の関連があること、さらに、YB-1 mRNAと予後不良因子に正の関連があることが観察された。以上、本年度の検討によりYB-1リン酸化標的薬が内分泌治療耐性乳癌の克服に有効であることを明らかにすることができた。
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