研究課題
Disulfide-bond A oxidoreductase-like protein(DsbA-L)は、抗炎症作用や高インスリン抵抗性作用を有するアディポネクチンの多量体化(活性化)に関与する分子であり、肥満や糖尿病の治療・予防の標的となり得ると考えられる。本研究では、DsbA-L遺伝子を標的とした糖尿病の予防・治療のためのシステム構築を目指して、以下の検討をおこなった。人間ドック受診者の末梢血から抽出したゲノムDNAを用いて、DsbA-L mRNA量の低下に関与する遺伝子型(rs1917760 -1308G/T)を判定し、血清中の総アディポネクチン量及び多量体アディポネクチン量をELISA法により測定した。それらの結果と人間ドック時の健診データ(平均6年程度の経時的データ)を基に解析を行ったところ、DsbA-L遺伝子多型(rs1917760)と多量体アディポネクチンとの間に関連性が認められ、加えて本遺伝子多型が多量体アディポネクチン(%)の低下を介して肥満に影響することも明らかにした。さらに、本遺伝子多型が糖尿病の関連疾患である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)発症に関連するか否かについても検討したところ、肥満や喫煙状況、性別、脂質パラメータ、肝機能検査値、血糖値など受診者の臨床的背景を考慮した詳細な解析(モデリング&シミュレーション)により、DsbA-L遺伝子多型は間接的にNAFLDの発症に関与することを明らかにした(Oniki et al. CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol., 2018)。
2: おおむね順調に進展している
肥満や非アルコール性脂肪性肝疾患に関する検討については、研究実績に記載した通りに進んでいる。糖尿病合併症に関する検討については、糖尿病患者の臨床情報はすでに収集できており、現在、糖尿病合併症のモデリング&シミュレーションに着手していることから、本研究課題は順調に進展している。
引き続き、糖尿病合併症のモデリング並びにシミュレーションを行い、糖尿病治療におけるDsbA-L遺伝子の臨床的意義と治療標的としての可能性について検討する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol.
巻: - ページ: -
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