研究実績の概要 |
本研究では抗MRSA薬のうち、血中タンパク結合率の大きいテイコプラニン(TEIC)およびダプトマイシン(DAP)に焦点を置き、アルブミンの質的変動が薬物の遊離型分率に与える影響と病態の進行度との関連性を明らかにすることを目的としている。令和元年度の研究実績は以下のとおりである。 平成30年度まではUPLC-MS/MSを用いた血漿中TEIC定量法の確立を試みていたが、重水素置換体の内部標準物質が発売されておらず、DAPの重水素体を用いた結果、内部標準としての機能を示さなかった。そのため、HPLCを用いた定量法へ方針を変更し検討を行った。TEICは単一の成分による製剤でなく、6種類の異なる構造をもった成分(A3-1, A2-1, A2-2, A2-3, A2-4, A2-5)が混合した製剤である。移動相の種類およびGrajient条件を検討し、上記6剤の分離を試みた結果、それぞれ異なるRetension timeにおいて単一かつ良好なピークが確認された。定量限界における日内変動はprecision(CV≦14.5)、accuracy(89.4-111.2)ともに良好であり、各QCの日内変動についてもprecision(CV≦14.9)、accuracy(99.5-108.1)ともに良好であった。次に各成分のタンパク結合率が90%程度と仮定し、限外濾過法を利用して遊離型濃度測定系の確立を試みたが、最も含有量の少ないA2-1の定量が困難であった。現在、回収率を上昇するために前処理の条件検討を行うとともに、平衡透析法による遊離型薬物の分離方法を検討中である。また、TEIC使用患者検体のサンプルのリクルートは完了したため、遊離型濃度の測定系が確立した後、アルブミンの構造とタンパク結合率の関連性を検討する予定である。
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