研究課題
術後悪心嘔吐 (PONV) は、術後患者の3分の1が経験する愁訴である。PONVは離床や経口摂取開始の遅延を引き起こして術後の回復を妨げ、結果的に予後の悪化や入院期間の延長を招く。しかしながら、PONVの危険因子や発症要因、PONVの予測に有用なマーカーに関する知見は多くはなく、PONV発症に関連する因子を解明してPONVの発症予防を行うことは医学的・医療経済学的側面から極めて重要であると考えられる。PONV発症に寄与する要因を見出すことを目標に、まず始めに関連遺伝子の多型解析法の確立およびオピオイド鎮痛薬の血中濃度測定系の確立を行った。その結果、FDAガイドラインに基づき、良好なバリデーションを有した、血漿中フェンタニル濃度を測定することが可能な測定系を確立することができた。また、目的遺伝子のpolymerase chain reaction (PCR) 産物を制限酵素処理するPCR-restriction flagment length polymorphism (PCR-RFLP) 法を用い、フェンタニルの薬物動態および薬効に関連する遺伝子(CYP3A4、CYP3A5、OPRM1)の遺伝子多型を解析する方法を確立した。さらに、術後患者において、PONV発症の有無、疼痛レベル、既知のPONV発症リスク因子の保有数、臨床検査値などの情報を収集し、PONV発症群と非発症群の2群に分けてそれぞれの因子の寄与度を解析した。その結果、PONV発症に関連するリスク因子を新たに見出すことができた。
2: おおむね順調に進展している
当初掲げた計画に沿って、研究初年度の目標を達成し、着実に結果を得ていると考えられる。
研究第2年目では、前年度の解析により見出したPONV発症のリスク因子を用いてPONV発症予防アルゴリズムを作成するとともに、新たに見出したリスク因子と既存のリスク因子を組み合わせることによるPONV発症予測の精度に与える影響を検討する。さらに、作成したアルゴリズムに基づいて個々の患者のPONV発症を予測し、実際に観測されたアウトカムと比較することでアルゴリズムの予測精度を評価し、PONV発症をより精度よく予測するアルゴリズムの構築を進める予定である。
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