研究課題
術後悪心嘔吐 (PONV) は、術後の回復を妨げ、結果的に予後の悪化や入院期間の延長を招く。その発症予測に関する知見は少なく、PONV発症予測に有用なマーカーを見出すことはPONVの発症予防に貢献することができ、医学的・医療経済学的観点からも重要であると考えられる。本年度はPONVの発症に関連する因子を用いてPONVの発症を予測する式あるいはアルゴリズムを作成することを目標に、まず、PONV発症予測のマーカーとなる因子の探索を行った。本研究対象患者においてPONV発症に関連する因子として、Apfel scoreに代表される既知のPONV発症リスク因子に加えて、新たなリスク因子を見出すことができた。次に、既知のリスク因子を用いたPONV発症予測式と、新たに見出したリスク因子を用いたPONV発症予測式を確立し、両者を比較した。その結果、新たに見出したリスク因子を用いたPONV発症予測式の予測的中率は、既知のリスク因子による発症予測式と比較してやや高いことが明らかとなった。さらに、既存のリスク因子と新たに見出したリスク因子を組み合わせることによるPONV発症予測の精度に与える影響を検討した結果、既存のリスク因子にオピオイド鎮痛薬に対する反応性を追加することで、予測精度が向上することが明らかとなった。今回注目した、オピオイド鎮痛薬に対する反応性は、費用・時間ともにかかる遺伝子検査と比べて簡便なマーカーであり、今後臨床現場における活用が期待されるものと考えている。
2: おおむね順調に進展している
当初掲げた計画に沿って、研究第2年目の目標を達成し、着実に結果を得ていると考えられる。
研究最終年では、前年度の解析により見出したPONV発症予測式あるいはPONV発症予測に有用なマーカーを用いて、個々の患者のPONV発症を予測する。予測と実際に観測されたアウトカムを比較し、PONV発症の予測精度を評価する。この際、予測精度の良さと臨床現場における利便性等を考慮し、最も適切と考えられるPONV発症予測式またはアルゴリズムの確立を目指す。さらに、PONVに対する予防策を構築し、その効果について検証する予定である。最終的には、本研究で得られた成果を総合的に評価し、学会発表・論文発表を行い、エビデンスの構築を目指す。
すべて 2018
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)