前年度の研究により、必須アミノ酸(EAA)の混合液または非必須アミノ酸(NEAA)の混合液を培地に添加してアミノ酸の濃度を増加させると、ヒト肝癌由来HepG2細胞のCYP3A4発現量が有意に増加することを見出した。そこで、本年度は主にそのメカニズム解析を実施した。 種々のCYP3A4レポーターコンストラクトを用いたレポーターアッセイによる解析の結果、これまでにCYP3A4の発現調節に重要な役割を持つことが報告されている近位プロモーター領域、XREM領域、CLEM4領域だけでは、アミノ酸によるCYP3A4遺伝子の転写活性化を十分に説明できず、これら以外の領域が大きく関与することが明らかとなった。 これまではアミノ酸の混合液を使用していたが、どのアミノ酸がCYP3A4の発現増加に寄与しているかを明らかにするために、まず必須アミノ酸および準必須アミノ酸の単体を用いてCYP3A4レポーターアッセイを行なった。その結果、いくつかの必須アミノ酸が単体でもレポーター活性を増加させたことから、これらアミノ酸がCYP3A4の発現増加に寄与している可能性が考えられた。 また、DNAマイクロアレイ解析を行うことで、EAAまたはNEAAの添加による遺伝子の発現変動パターンを明らかにし、さらに、EAAとNEAA共通で大きな発現変動を示す遺伝子を特定した。また、KEGGを用いたパスウェイ解析により、活性化されるシグナル伝達経路を推定することができた。 以上の結果を基に今後さらなる解析を行い、ヒト肝由来細胞におけるアミノ酸によるCYP3A4発現調節機構の詳細を明らかにする予定である。
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