近年、特定のHLA(ヒト白血球抗原)タイプが医薬品による特異体質性副作用の発症と強く関連することが明らかにされてきている。我々はこれまでに、抗がん剤モガムリズマブを投与した成人T 細胞白血病患者のうち、特定のHLA タイプを有すると重篤な皮膚障害を発症する頻度が高くなることを世界で初めて見出した。そこで本研究では、臨床現場で利用可能でかつ高精度のHLA タイピング法を開発し、副作用回避のためのHLA 事前診断への応用を目的とする。 昨年度は、両親由来染色体の分離手法と各HLA 遺伝子の特異的な増幅方法の検討を行ったが、本年度はモガムリズマブの副作用回避のためのバイオマーカーとなるHLAアレルを判別する検出系の構築を行った。類似のHLAアレルとバイオマーカーとなるHLAアレルを判別するためには、3か所の一塩基変異を判別する必要があることが明らかとなった。3か所の一塩基変異のうち両端の変異は、プライマー3'末端の一塩基ミスマッチを感知するDNAポリメラーゼを使用することで、PCRによる増幅の有無により変異を判別することが可能だった。増幅されたPCR産物に含まれる中央の一塩基変異を検出するために、ddNTPを用いてプライマー1塩基伸長反応行い、その伸長された塩基を判定するためにプライマーに相補的な一本鎖DNAを結合させた金ナノ粒子を加え、金ナノ粒子の凝集によっておきる色調の変化を指標に一塩基変異の判定を試みた。形成された二本鎖DNAの末端が相補的な場合とミスマッチの場合で金ナノ粒子の凝集による色調の変化が認められ、末端塩基の情報が得られた。現在、最適な反応条件の検討を行っている。
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