研究課題/領域番号 |
17K15520
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
上原 正太郎 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 研究員 (10733123)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マーモセット / チトクロムP450 / CYP2B6 |
研究実績の概要 |
医薬品開発におけるマーモセットの有用性を調べる目的で、代表的な薬物代謝酵素であるチトクロムP450(P450)のアミノ酸配列の相同性、組織発現分布および薬物酸化特性についてヒトの場合と比較検討した。これまでCYP1A、CYP2C、CYP2D、CYP2EおよびCYP3Aサブファミリーに属する主要な薬物代謝型P450分子種はマーモセットとヒトの間で組織発現分布および薬物酸化特性が類似していることが明らかにされている。未だ解析が不十分なマーモセットCYP2B酵素の生化学的特徴をヒトの場合と比較検討した。アミノ酸配列の比較解析により、マーモセットCYP2B6はヒトCYP2B6に対して86%の高いアミノ酸相同性を示し、げっ歯類等の他の実験動物のCYP2B酵素に比べてより進化的によりヒトに近いことが示された。マーモセット組織によるCYP2B6 mRNA発現レベルを確認したところ、ヒトCYP2B6と類似して、肝臓で最も高い発現量を示した。大腸菌発現系により調製した組換えマーモセットCYP2B6酵素はヒトCYP2B6の基質であるエトキシクマリン、ペントキシレゾルフィン、プロポフォールおよびテストステロンの酸化反応を触媒した。マーモセット肝ミクロゾームは効率的にプロポフォール4-水酸化反応を触媒し、そのKm値は組換えCYP2B6酵素と類似して低値を示した。以上の結果から、マーモセットCYP2B6の組織発現分布および酵素の薬物酸化特性はヒトCYP2B6の場合と類似していることが明らかになった。本研究は創薬研究においてマーモセットを用いた薬物動態解析を行う際、有用な基盤情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、実験動物のチトクロムP450酵素の薬物酸化触媒能および組織発現分布の解析をテーマにCYP2B酵素の機能解析を行い、マーモセットとヒトの肝薬物代謝特性の類似性を部分的に明らかにした。その他、マーモセットについて肺に発現するCYP2F1や薬物の膜輸送を行う新規ABCトランスポーターの解析を行い、創薬研究においてマーモセットを用いた薬物動態解析を行う際、有用な基盤情報を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
主にチトクロムP450を介した薬物酸化反応の動物種差に焦点を当てて、実験動物とヒトの間の肝薬物酸化特性の相同性・相違性について検討する。特にヒト肝キメラマウスの薬物代謝特性をヒトの場合と比較し、ヒト薬物代謝の予測におけるヒト肝キメラマウスの有用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究を誠実に予定通り実施した結果、実際に使用した研究費が年度当たり研究費予定額を下回り、研究費に残余額が生じた。
(使用計画)次年度に実施する「チトクロムP450を介した薬物酸化反応の動物種差の評価」に必要な試薬を購入する予定である。
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