研究課題
褥瘡治癒において、創傷面の湿潤環境を整えることは治療に進める上で非常に重要である。すなわち、創傷面の滲出液に対して外用剤そのものや、基剤および添加剤が有する吸水特性や吸水した水の状態などを解明し、さらにはそれらが滲出液に含まれるタンパク質等に及ぼす影響の解明に焦点を当て、得られた結果を評価することで経験的に行っている褥瘡治療に対する指針と新たな概念を構築することを目的としている。本年度は、MRIを用いて、T2緩和時間画像および見かけの拡散係数画像を撮像し、画像からMRパラメータ(T2緩和時間)を求め水の分子運動を可視化することを利用し、主薬がヨウ素系の水溶性基剤およびO/W型基剤の外用剤と水分子の状態やその変化に関して検討をした。その結果、外用剤ごとに含まれている水分子と外用剤との相互作用に関して違いがあることが認められた。特に同じO/W型の乳剤性軟膏であり、含水率もあまり差がないとされるオルセノン軟膏とゲーベンクリームとの間に違いが認められる結果となった。また、外用剤と水を混和したものや外用剤に水を吸水させたものにおいても、外用剤ごとに違いが認められた。従って、外用剤の構成成分である基剤や添加剤の違いによる影響が大きいことが明らかとなった。また、ヒト表皮角化細胞を用いて、上記の外用剤がタンパク質やサイトカインの発現に対する影響を検討した。その結果、AQP3、EGFやTNA-αのmRNAの発現に影響を与える外用剤あることが明らかとなり、外用剤中の基剤や添加剤がそれらに大きく影響していることが考えられてた。今回の結果より、これまで同じ分類とされていた外用剤であっても基剤や添加剤の違いにより水分子との関係性やタンパク質発現に与える影響が異なることが明らかとした。褥瘡治療、特に創傷面に対する外用剤の選択に対する新たな知見が得られた。
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