研究実績の概要 |
前年度から角栓中のマイクロバイオームを次世代高速DNAシーケンサー(NGS)を用いて高精度に解析した。その結果、細菌のみならず多様な真菌も角栓中に存在していることが明らかになった。本年度は解析アルゴリズムを改変し詳細な角栓型別を行った。その結果、1) アクネ菌型、2) 細菌多様性型、3) マラセチア型に大別された。1)は従来より知られているが2)および3)は新規に得られた知見である。よって難治型のざ瘡は2) and/or 3)が原因である可能性が高い。そこで2)および3)の優位菌を迅速に検出できれば治療に寄与することができる。細菌多様性型の優位菌は、DNAシーケンス解析からBacterium sp. 1, 2, 3が得られた。マラセチア型は、Malassezia sp. 1, 2が得られた。これらの5株の部分的ゲノムを解析し、LAMPプライマーを各々について作製した。皮膚鱗屑からは高収率で核酸を得る必要があるので、核酸抽出法についても検討した。各種の検討結果から、液体窒素破壊法がもっとも高収率であった。新たに開発したLAMPでは10 ngの検出感度であった。 次に選別された5株について、薬剤感受性試験を実施した。Bacterium sp. 1, 2, 3は尋常性ざ瘡の標準的治療薬であるクリンダマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンにはやや低感受性を示した。一方、Malassezia sp. 1, 2はケトコナゾール、ミコナゾールには感受性を示した。このことから、細菌耐用性型の症例には、従来の治療薬には抵抗性を示す可能性があること示された。現在、皮膚科領域で用いることのできる抗細菌薬の探索を進めている。また、ざ瘡は細菌が原因と考えられていたが真菌も豊富に存在していることも判明した。抗真菌薬の投与も検討するべきことも考えられた。
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