尋常性ざ瘡はグラム陽性細菌であるアクネ菌を起因菌として発症する慢性炎症性の皮膚炎であるが、既存の抗菌薬に不応答な難治性尋常性ざ瘡が存在する。先行研究からアクネ菌あるいは細菌を含まない毛包が存在することを明らかにした。従って、毛包中のマイクロバイオームを明らかにし(診断)、この情報に基づいて抗菌薬を選択することは治療上の合理性がある(個別化治療)。これまでの検討から角栓中にはドメインを超えた細菌と真菌の共存型の症例が存在した。そこでアンプリコンシーケンス解析から優位な菌として、細菌ではアクネ菌、Bifidobacterium spp.が、真菌ではMalassezia restricta / M. globosaが優位菌種として同定された。そこで、複合菌の存在がケラチノサイト(NHEK)に及ぼす影響を調べた。Bifidobacterium spp.はアクネ菌が産生誘導するIL-8とCOX2の産生を抑制した。一方で、M. restrictaとM. globosaはアクネ菌が誘導するIL-6 / L-8の産生を増加させたが、TLR2には影響を与えず、また、COX2の産生は抑制する傾向が見られた。さらに、Malassezia spp.とアクネ菌の相乗効果を異なるMOI比率で検討したところ、特定のMOI比でIL6/IL8の産生が有意に増加した。このことは、角栓に存在する菌種の組み合わせ、あるいは存在比率が炎症の進展に重要な役割を有することが示された。特に、抗細菌作用と抗真菌作用の双方を考える治療が大事である。
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