研究課題/領域番号 |
17K15525
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
小池 伸 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (70751014)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 統合失調症 / メチルグリオキサール / Nrf2 / グルタチオン / カルボニルストレス |
研究実績の概要 |
ヒト神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞を用いた研究で、メチルグリオキサール(MG)を神経細胞に添加すると、終末糖化産物(AGEs)の一種であるMG-H1、カルボキシエチルリジン、アルグピリミジンがMG濃度、処理時間依存的に蓄積することを明らかにした。また、転写因子Nrf2の活性化剤であるカルノシン酸とCDDOを前処理しておくとAGEs群の蓄積を顕著に抑制した。一方で、グルタチオン(GSH)合成阻害剤の処理により、Nrf2活性化剤の効果は消失した。本研究よりMGによって誘導されるカルボニルストレスに対してNrf2活性化に伴うGSH濃度の上昇が有効であることが分かった。 カルボニルストレスを呈する統合失調症患者の血漿中ではAGEs群の一種であるペントシジン値が上昇している。本研究では、この統合失調症の病態に対するモデルマウスを作製することを目的として、マウスの腹腔内にMGを投与した。MG投与マウスにおけるMG濃度を測定したところ、投与後30分から脳内においてMG濃度が上昇することが分かった。また、投与後数時間の脳では一部タンパク質のMG-H1化も確認された。さらに、低濃度のMGを5日間連続で腹腔内投与した場合、特に線条体や海馬において慢性的にMG濃度が上昇することも分かり、マウスへのMGの腹腔内投与が脳においてカルボニルストレスを誘導することを示した。また、MG投与により脳内のGSH濃度がわずかに減少することも分かったが、これは過剰量のMGの解毒のためにGSHが一時的に消費されたものと考えられる。すなわち本研究で行ったin vitro及びin vivoの実験から、中枢神経系におけるカルボニルストレスに対する防御機構としてGSHが重要な役割を担っていることが分かり、GSHの生合成を制御しているNrf2の活性化が脳におけるカルボニルストレスを低減させる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞におけるカルボニルストレスに対してNrf2活性化剤が有効であることを明らかにし、これがグルタチオン濃度の上昇によるものであることを示した。また、マウスにMGを腹腔内投与することによって脳内におけるMG濃度の上昇とAGEs群の蓄積を確認し、MG由来のカルボニルストレスをマウス脳に負荷させることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
MGを腹腔内投与したマウスに対しカルノシン酸などのNrf2活性化剤を経口投与することによって、脳内のカルボニルストレスが軽減するか否かを明らかにする。また、カルボニルストレスモデルマウスの評価として行動実験も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に得られた結果からマウスを用いた実験を行うため、オーダーメード飼料の依頼と購入をする予定であり、これに対して前年度未使用額含めて予算を執行する。
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