統合失調症患者の脳内ではグルタチオン(GSH)濃度が減少していることが報告されている。本研究ではNrf2によって濃度が制御されているGSHとMGの相関を知るために老齢マウスを用いた検討を行った。 蛍光HPLC法で脳内GSHを測定したところ、老齢マウスでは若齢マウスに比べて20%程度GSH濃度が減少していることを確認した。本研究では脳内MG濃度を測定するにあたり、脳を6部位に分画した(前頭皮質、海馬、側坐核、線条体、脳幹、小脳)。この6部位においてMG濃度を測定したところ、前頭皮質のMG濃度が最も低く、脳幹のMG濃度が最も高いことが分かり、MG濃度は脳の部位毎に大きく異なっていることが分かった。6部位毎で老齢マウスと若齢マウスのMG濃度を比較したところ、全ての部位において老齢マウスの方が若齢マウスに比べてMG濃度が低いことが分かったが、肝臓や血清ではこの減少は認められなかった。また、若齢マウスにおいてMG代謝酵素であるグリオキサラーゼ1のタンパク質発現量はMG濃度と正の相関性があることが分かったが、その相関性は老齢マウスでは認められなかった。一方で、MGから産生される終末糖化産物(AGEs)の蓄積は老齢マウスと若齢マウスの間に差はなかった。 また、MGをマウス腹腔内に投与する実験や組織ホモジネートを用いた検討により、過剰に産生されたMGは亢進した代謝機構によって速やかに代謝されるかまたはAGEs化し、一時的に消失することが分かった。さら統合失調症モデルマウスの前頭皮質、海馬、線条体では野生型マウスに比べてMG濃度が高値を示すことも明らかにした。脳内では過剰にMGが産生された場合、代謝系が亢進し、GSHは消費され、カルボニルストレスに脆弱になっていると思われる。従って、Nrf2活性化剤がこの脆弱性を改善させる可能性がある。
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