薬物代謝酵素の発現状態に基づいた投与量の調節が、副作用の軽減に有効です。しかしながら、併用薬が多い患者では代謝酵素の誘導及び阻害により発現量の予測が困難なため、発現状態を認識して投与量を調節するインテリジェント製剤の開発が期待されています。本研究では、腸内のビリルビン濃度から肝臓における薬物代謝酵素(UDP-グルクロン酸転移酵素1A1、UGT1A1)活性を把握して薬物放出量をコントロールする経口投与製剤を開発することを目指しております。 本年度は、アルギン酸を材料とした薬物固定化ゲルからの薬物放出量がビリルビンの有無でどのように変化するかを調べ、さらに使用したアルギン酸の種類並びにゲル調製時の条件がビリルビン存在下での薬物放出へ及ぼす影響を検討しました。その結果、水溶性薬物をモデル薬物として使用した場合、用いたアルギン酸の分子量が大きいほどビリルビン存在下での薬物放出が抑制される傾向が認められました。また、マンヌロン酸/グルロン酸比(M/G比)が1より小さいとビリルビン存在下での薬物放出量が減少し、逆にM/G比が1より大きいと薬物放出量が増加する傾向がみられました。さらに、調製時のカルシウムイオン濃度は、ビリルビンの有無による薬物放出量の変化に影響を与えることが明らかとなりました。これらの結果から、ビリルビンの有無によって増減するアルギン酸ゲルビーズからの薬物放出量は、使用するアルギン酸の種類やゲルビーズの調製方法によりコントロールできる可能性が示唆されました。
|